【後編】「スペシャリスト」になれなくてよかった。 35歳の元エンジニアが選んだキャリアパスとは?

 前編に引き続き、実際に「35歳の岐路」を目の当たりにし、ゼネラリストの道に進むことを決断した、株式会社エスユーエスの元エンジニア・現営業部長として活躍されている圓城さんに、決断の理由を伺いたいと思います。

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株式会社エスユーエス
関西第一ソリューション部 部長
圓城 博章(Enjo Hiroki)

2006年入社。IT未経験で入社後、テスト評価、開発業務を経て、26歳のときに、新規事業であるゲーム部門の立ち上げメンバーに抜擢。5年間、企画に携わった後、32歳で京都ソリューション課の営業に転身。3年後の35歳に、関西第一ソリューション課の部長に就任。

 
目次
 

32歳、キャリアを見失う

―企画職として5年携わったゲーム事業が規模縮小という状況だったと思いますが、次はどうしようと考えていたんですか?

僕がゲーム事業で5年間やってきたことは、みんなの意見を引き出して面白いであろうゲームを考えるという企画職と言われるものでした。だから、エンジニアはそれぞれスキルを高めてレベルアップしていってるのに、僕は目の前のことをただひたすら死に物狂いでこなしてきたという印象しかなくて、何かスキルを身に着けられたという実感はなかったんですよね。

ゲーム事業の規模を縮小することになって、当然次のキャリアを決めなければいけないんですけど、今の僕に何ができるのかわからなくて、次のキャリアを完全に見失ってました。

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―どうしたんですか?

「本当にどうしよう…」と思ってたら、ちょうど社長に呼び出されたんです…。ゲーム事業で多少関わっていたとはいえ、社長なんでびびりました…。

―何の話だったんですか?

社長から開口一番に、「お前が会社を辞めると言い出しても俺は止めん!」って言われたんです…。「えーー!!」ってなりましたよ。遠まわしにクビって言われてるんかと思って(笑)。 

ただ実際は、「ゲーム事業でいろいろ振り回してしまったから、本当にやりたいことをやればいいし、それがうちじゃなくても文句言えない」というありがたいお言葉だったんですけど…。とりあえず真剣にキャリアに向き合おう思って、1週間くらい考える時間をもらいました。

―どんな選択をしたんですか?

一番現実的なのは、転職して今のスキルをすぐに活かせるゲームプランナーになることでした。だけど、まだ会社に恩返しできた実感がなかったし、ゲーム業界の将来性にも気になるところがあって、転職しようとはあまり思えなかったんです。

やっぱり僕は、エンジニアに戻りたかったんですよね。先が読めるから!!

―「プログラマーになって世界を獲りたい」が目標ですもんね!

そうです(笑)。でも、ふと思ったんです。「プログラマーになれたし、次はスペシャリスト目指すやろ!ってひたすら頑張ってきたけど、スペシャリストの最終ゴールって何なんやろう?最高峰ってなんなんやろう?」って。いろんな人に聞いてみたけど、納得する答えは得られませんでした。

そして、自分がエンジニアとしてこれまでどんな勉強をして、どんな現場に行けば欲しいスキルを身に着けられるか、もっと担当営業さんにわかってほしいと思っていたことや、最前線で活躍するエンジニアをこういう風に生かせるのになと思うことがあっても、関われずにいたことを思い出しました。それはゼネラリストという新たな道に進まないと挑戦できないことだったんですよね。

―スペシャリストとゼネラリスト、2つの選択を迫られたんですね

「スペシャリストになれば一般的な昇格ルートから外れるのでは?」、一方で「ゼネラリストになれば技術現場から離れなければいけないのでは?」と、不安は尽きませんでしたね。

―そこからどう決断したんですか?

僕、貧乏性なんです…(笑)。

―え、どういうことですか(笑)。

エンジニアに戻るとなれば、「5年間のゲームプランナーとしてのスキルが無駄になってしまう…それは嫌だな」って…。だったらエンジニア出身という武器を使って、スペシャリストの道に進もうとしている人がキャリアを実現しやすい土台をつくりたいと思ったんです。

―それで、ゼネラリストを目指すことになったんですね。

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1週間後、社長との面談で「ゼネラリストになるために、改めて営業から始めたい」と申し出ました。「さすがにそれは…」って言われるかと思ったんですが、意外と二つ返事でOKしてくれて、「本気で営業やるなら本社で修業せい」というアドバイスまでいただき、取締役に直接指導していただくことになったんです。

―ポジション的な目標はあったんですか?

それはありませんでした。少なくとも自分がエンジニアのときに、「こういう勉強ができる環境があったら」とか、「こういう現場があったら」と思っていたことを、内側から変えてやろうとだけ考えていました。でもそれをやろうと思ったら1営業では当然無理で、「早く出世しないと、発言力もたないと!」と思ってましたね。

32歳、スぺシャリストからの大転身。

―営業になって戸惑ったことはありますか?

開発のプロジェクトは複数人でやるのが基本なので、ゴール設定に対してスケジュールが決まってます。その指標を基に、このスキルの人にここを担当してもらおう、とプランが立てられていくんですよね。

でも営業はゴールが決まったら次の瞬間スタート、ゴールに到達するまでの内容はおまかせが多いです。例えば、「王道なやり方は何?一般的なやり方は何?」って聞いても、答えはなくて…。文化の違いだろうなぁと慣れるのに時間がかかりましたね。

―失敗はしましたか?

勿論です(笑)。自分がエンジニアだったからこそ、一人ひとりに寄り添いたいと強く思ってたはずなのに、悩みに気づいてあげることができずに退職することになってしまったり、良い方向に持っていってあげたいのに逆に悪くしてしまってるんじゃないかと落ち込むこともありました。人の人生を変えてしまう仕事なんだと改めて実感しましたね。 

―辞めたいと思ったことはないんですか?

それは考えたことがなくて。そういう苦しさもわかった上でキャリアチェンジしたから、どんだけマイナスが続いても、それをひっくり返すプラスが出るまでは辞めれない、辞めないと思っていました。

―何をモチベーションに頑張ることができたんですか?

エンジニアの時には味わえなかった快感を味わえてるからですかね。エンジニアは5%ずつ20日間とか、0.1%ずつ1000日間で100%とかっていう案件があって、「予定通りにやり終えた!」という達成感、それ以上だと、「ノーミス最高(笑)!」が喜びなんですよね。

逆に営業は極論、今日何もしなくても明日2倍やればいいとかもありますし(笑)。全然うまくいってないときに成約がポンと決まったりもあります。担当しているエンジニアさんが想像以上に評価されることもあって「こんなことあるの?まじか!ひゅぅ~!」っていう喜びの違いが、モチベーションになってますかね。

―さすが…それが出世にも繋がってるんですかね?

いやいや、1年目なんかどんな若手よりも数多く電話して訪問してたんですけど、半年間成約がなかったんですよ(笑)?さすがに焦りましたね。これは他の営業と同じ動きをしててもあかんと、一か八か半年先に成果が出るような営業スタイルに変更してみたんです。その作戦が功を奏したのか成約が続き、その年のMVPに選ばれました。こういう先読み志向はエンジニア時代に身に着いたものかもしれません。

その後も戦略勝ちでそれなりに結果が出て、2年目で神戸エリアのマネージャーを任せられ、なんとか2年連続で課の計画を達成したので、このたび京都本社の部長に任命していただきました(笑)。

33歳、ゼネラリストになる。

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―ゼネラリストになって気を付けていることはありますか?

マネジメントという意味では、それぞれの個性を活かすことは意識してましたね。人間ですから得意不得意はあるわけですけど、うまく配置させたり連携させて総合力を105%や110%にするようなチーム作りは意識してました。

―ゼネラリスト、スペシャリスト、それぞれに必要なスキルは何だと思いますか?

自己認識力ですかね。仕事って人と人が関係するものばかりなので、自分を理解してないと相手にも理解してもらえるように伝えられず、やってほしいことをしてもらえなかったりするんですよね。特に上に立つ立場の人は、依頼することや指導することも多いから、物事をスムーズに進めるためにも大切なスキルだと思います。

―逆にスペシャリストに必要なスキルは何だと思いますか?

何歳になっても新しいことを学ばなければいけない世界ですから、人よりちょっと先に取り掛かる、毎日10分多く勉強するだけで恐るべき差が生まれます。それはとても実感してました!「ずっと好きでいる努力」ができる人は強いんじゃないと思います。

―エンジニアに戻りたいと思ったりしないんですか?

キャリアの安定性はエンジニアの方があると思うんです。仕事も勉強もやった分だけ確実に身に着くので、スキルが下がることはないですし、運の要素がないから安定してるとも言えるかと。

多分エンジニアを続けてたら、「スペシャリスト最高!」って言ってると思うんですけど、ゼネラリストの面白さを知った今の僕は、離れていた期間のスキルがポンと与えられたとしても戻りたくはないと思っちゃいます(笑)。

―ゼネラリストになった今の目標を教えてください!

キャリアチェンジしたときと目標は変わっていません。今はようやく、それを実現できる発言権を持ったかなという段階ですかね(笑)。

それがある程度整ったら、やっぱり新規事業にも挑戦してみたいです。次は誰かが立ち上げたものに参加するという形ではなく、自分が魂をこめた事業を立ち上げたいと思っています。

―構想はあるんですか?

ないです(笑)。でも今のタイミングだったら、どこがブルーオーシャンでどこがレッドオーシャンなのか、やろうと思ったらどんな技術力がいるのか、エスユーエスだったらできそうかなどは、常々考えるようにしています。第4次産業革命なのでネタはつきませんしね。

幸い、常に最新の情報が入ってきて、世の中に発信されている情報の真偽までわかる業界にいるので、そこらへんは優位性は有るかなとか思ってます(笑)。

35歳、キャリアの道に迷ったら。

―最後に、「スペシャリスト」と「ゼネラリスト」の岐路を経験した先輩として、道を悩んでいるエンジニアにメッセージをお願いします!

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20代では自分の視野を広げて、身に着けたものをしっかり磨いていってください!やることをしっかりやっていれば、変化はその人に応じたタイミングで適した形で訪れると思ってるので、焦って次のキャリアを決めることで失われるものがあるなら、その時が来るまで待てばいいと思うんです。焦って決める方が損です(笑)。

幸い僕には会社の理解や環境があって、ゼネラリストとスペシャリストどちらの道を選択することもできました。後押しもあり、そのタイミングで僕はゼネラリストを選択しましたが、後悔もしてませんし、胸張ってこの道を選んでよかったと言えます!後悔しないように悔いが残らないように、時間をかけて決めてください。僕でよければいつでも話聞きますよ(笑)!

―頼もしい(笑)。今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

 

(E-30!!!編集部 猪熊)

 

 

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