近年の新卒採用のトレンドとなりつつある「通年採用」。加えて、当メディアの運営会社(株)エスユーエスでは、入社月まで選べる『通年入社』制度を導入しています。そのメリットやデメリットをふまえつつ、制度化までの経緯や背景などに迫ってみました。
「通年採用」ってなに?
新卒「通年採用」とは、期間を限定せず年間を通じて採用活動を行う取り組みのことです。日本以外の先進国では一般的な採用手法ですが、日本では4月の一括入社を前提として、就職活動が学業の妨げにならないことを目的に、日本経済団体連合会(経団連)が「新卒の募集広告は大学3年生の3月から開始、内定を出すのは6月からにしましょう」というような、採用活動解禁時期や手法を定める就職協定を作っていたのです。
しかし経団連の協定に従うつもりのない大手外資系企業の増加や第二新卒の増加などにより、一括採用が時流に合わなくなったことを機に2018年秋、経団連が就職協定を廃止することを発表しました。もう20年以上前から課題とされていたものの、4月での一括入社は変わることのない採用手法だっただけに、この発表は世間を大きく驚かせました。
さらに2020年3月、新型コロナウイルスの感染が拡大によって、教育機関においてかねてからの「9月入学」制度に対する議論が再燃、大学では休校措置によって学習に遅れが出ていることからも、1年間を4つの学期に分けて授業を行うシステムである「クオーター制」の検討も活発化したのです。この流れから採用時期について再び議論が必要となり、「通年採用」に注目が再び集まりました。
「通年採用」を導入するメリットとデメリット
では「通年採用」には、学生・企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
それとは反対に、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
ご覧の通り、メリットは多い反面、デメリットもかなり多いことがよく分かります。
特に企業側は「業務負担が増える」「内定辞退/内定承諾後辞退が増える」という点に懸念を置いており、グラフのように実際に実施や予定をしている企業は全体の2割程度に留まるなど、まだまだ導入のハードルが高いことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
さらに導入ハードルの高い『通年入社』を制度化した経緯
そんな中エスユーエスでは、「通年採用」よりさらに導入ハードルの高い『通年入社』を2021年4月より制度化したのです。これまで説明した「通年採用」とはいったい何が違うのでしょうか?なぜさらにハードルの高い『通年入社』を制度化したのでしょうか?その背景や経緯を、エスユーエスで新卒の採用を担っているキャリアサポート部の古川部長にインタビューしてみました。
株式会社エスユーエス
人財開発本部キャリアサポート課 部長
古川 泰弘(Furukawa Yasuhiro)
2003年入社。エンジニアとしてエスユーエスに入社、プロジェクトリーダーとして半導体や無線IDタグなどの生産・品質改良を行う。その後採用部門に異動し、エンジニアの育成やフォロー、採用を担当。2019年部長に就任。
―まず、「通年採用」と『通年入社』の違いを教えてください。
大きな違いは“入社の時期”です。「通年採用」では、期間を限定せず一年を通じて採用活動を行いますが、学生が入社するのは4月です。当社が実施している『通年入社』は、一年を通して採用活動を行うとともに、4・7・10・1月と年4回の入社時期を設けています。新卒の方でも4月から働き始めなくてもよいというのが大きな特徴だと思います。
―『通年入社』制度を導入しようと動かれたきっかけは何だったのでしょうか?
実は4年前から『秋入社』制度というものは実施をしていたんです。これは、4月のほかに10月に入社できる制度です。当時は大学での“卒業要件”厳格化が急速に進み、わずか数単位が足りず卒業ができない学生が増えたんですよね。内定をもらっている企業は「内定取り消し」となってしまい、ある日改めて就職活動を始めたという学生が面接に来たんです。彼の「まわりの子は社会人として働いているのに遅れをとって焦っている」「9月の卒業後、半年は接客などのアルバイトで生計を立てないといけないので不安」という声がすごく印象に残ったんです。
―その声がきっかけになったんですね。
はい。そこで大学にリサーチしてみると、多いところでは9月に卒業する学生が全体の1割くらいいて、大学としてほとんどサポートできていないことがわかりました。そうした困った学生の何かの助けになれればと『秋入社』を制度化することにしたんです。
すでに実績のあった『秋入社』制度が大きなカギに
―実際に『秋入社』制度を導入してみて、反応はいかがでしたか?
多くの学生から応募いただき、やっぱり仮定したことは間違いなかったなと実感しましたね。これまで毎年7、8名ずつご入社いただており、とても活躍してもらっています。秋に入社したエンジニアから「制度を利用してよかった」「この制度が、応募や入社を決めるのに影響した」という声ももらっているので、導入は正解だったと思っています。
―実際のアンケート結果からも満足している様子が伺えますね
そうですね!これが詳しいアンケート結果になります。秋入社をしたエンジニアの9割近くが『秋入社制度があることを応募前から知っており、応募する理由になった』と答えてくれました。そしてこの制度を利用しようと思った理由としては、
と、まわりに遅れをとらずに働き始めたいと思い、応募された方が多かったことが分かります。
また、秋に入社をしてよかったこととしては、
と、やはり新卒として同期がいるのはありがたいと考えている方が多いことも分かりました。
―では今回なぜ、入社月を2回から4回に増やそうと思ったのでしょうか?
コロナウイルスの感染拡大で「留学に行けない学生が増えている」「研究がなかなか進まず、もう少しだけ継続したい」という声が増えていることを知ったのが大きいですね。企業に就職してしまったら、そのやり残しを実現することって難しいじゃないですか。だったら入社時期を遅らせてでも、学生時代のやり残しがない状態で入社してもらう方が、良い状態で社会人生活のスタートを切れるんじゃないかなと思ったんです。また会社にとってもメリットが多いこともありましたね。
―どのようなメリットがあるのでしょうか?
これは当社の業界が大きく関わってきます。当社は技術アウトソーシングを事業としている企業なので、折々にクライアントからプロジェクト案件をいただいています。それは4月・10月スタートのものばかりではなく、年間を通してのものが多いので、エンジニアの入社も分散した方が良いという面もありました。
何よりも“学生の役に立ちたい”という思いが、制度化の大きな理由
―ですが、入社月が増えれば負担も増えますよね?
そうですね…『秋入社』制度のときもそうでしたが、やはり「採用担当の工数が増える」「入社手続きや式典、集合研修の工数が増える」など、他部門の協力が不可欠ですしね。ただ意外と、「4月に一気に入社手続きするよりも、分散していた方が事務計画も立てやすい」や「研修担当が見なければいけない人数が減るので、一人ひとりに手厚い研修ができる」など前向きな声も多く、快く協力体制を敷いてもらえてたいへんありがたかったです。こうしたご協力があってこそ、この制度は定着させることができました。
―4月入社と7・10・1月で入社される方で、なにか違う点はあるのでしょうか?
何も変わりません(笑)。どの月でも入社式や入社前後の研修は開催しています。ビジネスマナーをはじめ、情報セキュリティやコンプライアンスに関する知識研修、エンジニアとしての働き方や技術研修などもおこなっております。同タイミングで入社する同期もいることも、安心できるのではないでしょうか。
―負担も大きい中、こうした「秋入社」や『通年入社』制度を次々と導入するのにはどういった想いがあるからなのでしょうか?
『秋入社』や『通年入社』制度を導入するにあたって、他企業の実施状況なども結構調べたのですが、実施している企業はほとんどなかったんです。そうした中、単に当社の採用というだけでなく、学生や大学が困っていることに少しでも役に立てればという思いが強いですね。
他にはこれまで、『奨学金返済補助制度』も真剣に検討してきました。理工系の場合、多額の奨学金を借りている学生は多く、社会人になってからの返済が苦しいという事実を知ったからです。結果として、どうせなら新卒全員の”基本給”を上げようということになりましたが(笑)。制度以外にも、コロナ禍の就職活動において学生同士の情報交換が減って不安がっていると知り、「学生同士がアバターを使ってコミュニケーションを取れる」といった “バーチャル空間内での説明会”なども開催しています。これも学生の声から生まれた説明会なんです(笑)。
今回の制度導入に留まらずこれからも、少しでも学生に役立とう思いを持ち、新たな施策を考えていければと思っております!
―次なる施策楽しみにしています!ありがとうございました。
再び注目を集めている「通年採用」ですが、それに加えて、新卒でも入社月が選べる『通年入社』制度を検討している企業も少しずつ出てきているようです。学生時代に留学など何かやり残したことがあって、4月以外に入社できたらよいのに…という方にはうってつけの制度ではないでしょうか。
また現在、コロナウイルス感染拡大の影響から選考がすべてオンラインになったことで、入社後にイメージギャップを理由に早期離職する方が増えているともいいます。この制度を使えば、4月を待たずに改めて新卒としてRe・スタートもできますので、既卒や早期離職の方にもおすすめの制度です。
下記ボタンより、ぜひご応募ください!
(E-30!!!編集部 猪熊)
-会社概要―
【社名】
株式会社エスユーエス
【設立】
1999年9月
【代表取締役】
齋藤公男
【資本金】
4億3,106万円(2021年3月31日)
【売上高】
89億6,700万円(2020年度)/81億1,700万円(2019年度)/71億60万円(2018年度)/60億円(2017年度)/55億円(2016年度)
【従業員】>
1,735名(2021年4月1日現在)
【事業所】
京都本社/東京オフィス/大宮オフィス/横浜オフィス/名古屋オフィス/大阪オフィス/神戸オフィス/岡山オフィス
※各事業所内に研修室・教室・相談コーナー完備/各種研修・勉強会・キャリア相談実施/自社開発・受託開発メンバー増強中
【事業内容】
最先端IT分野/自動車・航空機・家電・医療機器・エネルギー関連機器等の設計開発や組込システム等
*「優良派遣事業者」認定企業*
【取引先】
ソフトバンク/KDDI/GREE/楽天/DeNA/LINE/三菱重工業/日立製作所/パナソニック/ブリヂストン/三菱自動車/日産自動車/本田技研工業/SUBARU/いすゞ自動車/三菱電機/ダイハツ工業/川崎重工業/ダイキン工業
他大手企業400社