「やりたいことがなかった」エンジニアが、VRと運命的な出合いを果たし、国内屈指の最先端現場でプロジェクトをリードする立場になるまで。

今回は、エスユーエスで就業しているエンジニアが、どのようにして現在のキャリアに至ったか、そのチャンスを手に入れるためにどんな努力をしたのかをお伝えする企画になっています。

インタビューを行ったのは、国内屈指の最先端VR開発現場で活躍する小林さん。VRとの出合いに始まり、どんな行動や努力、仕事姿勢が夢の実現を導いたのかを紹介します。

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株式会社エスユーエス
関東第一ソリューション部 エンジニアリング課 
小林 裕介(Kobayashi Yusuke)

「やりたいことを見つけに」エスユーエスに入社。社内にこもらず、広い世界を見ようと参加し始めた社外勉強会でVR技術に出合う。業務のかたわら、VRゲーム開発に没頭し、様々なイベントやコンテストにも参加し続けた。関西から東京へ移住し、VRとの出合いから約2年半で、念願のVR開発の中核メンバーとなり活躍中。

 
 
 

『やりたいことを見つけに』エスユーエスに入社

―現在はどんなお仕事をされていますか?

昨年4月から大手通信会社の子会社にて、バーチャル空間内で会議をするためのアプリケーション製品化開発を担当しています。実はこのVRアプリには親会社での研究開発の段階から2年半以上携わっていて、VRの肝となるアバター開発を丸々任せていただきました。

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―最先端ど真ん中ですね!VRにはエスユーエス入社前から興味をお持ちでしたか?

いいえ。私が大学を卒業し、エスユーエスに中途で入社したのが2014年。一般的にVRが広まり始めた「VR元年」が2016年なので、まだVR技術には出合っていません。昔からゲームが大好きで大学は情報系だったのですが、開発者を目指すという気概もスキルもなく、就職せずに大学を卒業。就活をやり直す中で「やりたいことを見つけに来ればいい」というエスユーエスに惹かれて入社を決めました。

―1社目の就業先ではどんな業務に携わられましたか。

エスユーエスチームの一員として、神戸の大手製鉄メーカー研究所で生産管理システムの開発に携わりました。開発言語は大学で学んだJavaでしたが、最初は手間取ってばかりで、残業も多くなりがち。それでも、「どんな将来を描くにしても、プログラムミングスキルを高めないと話にならない」と覚悟して懸命に学んでいきました。

そんな入社1年目、ゲーム制作エンジン「Unreal Engine 4(UE4)」が無償化されるというニュースが飛び込んできました。ゲーム制作に興味がある私にとってはビッグニュースですが、使うにはC++の知識が必要です。そこで、担当営業の方に勧めてもらった社内勉強会にさっそく参加し始めました。ゲーム好きの同志がたくさんいて、知識やスキルの習得以上にメンバーとの交流が視野を広げてくれました。

―小林さんは社内勉強会だけではなく、社外勉強会にも熱心に通われていると伺いました。

入社当時から担当営業の方に、「自分の市場価値を意識しなさい」と口酸っぱく言われていて、2年目くらいからは「もっと給与を上げたい」という想いが強まりました。市場価値の高め方を模索して自己啓発本やビジネス書にも手を出すなかで心惹かれたのは、チームの先輩が楽しそうに語る社外での勉強会の話。「僕ももっと広い世界に目を向けてみよう」と、先輩に教えてもらった勉強会検索サイトで、思い切ってゲーム開発勉強会に申し込みました。

 

 

社外勉強会でVR技術に出合い、自らの道を確信して東京へ移住を決意

参加してみていかがでしたか?

「素人が行っても大丈夫かな…」と恐る恐る行ってみたところ、話の8割はチンプンカンプン。それでも業界の実情や知らない技術に触れられて、世界が広がる感覚にワクワクしました。1度参加するとハードルも下がり、面白そうな勉強会を探しては最低でも月1回、多い時には毎週末通い詰めました。さらに、初めて自らゲーム開発に挑戦して、社外勉強会で知ったコンテストへの応募も始めました。

なぜ、コンテストに応募しようと思われたのでしょう?

ゲーム制作エンジンUE4に使用するC++は社内勉強会で学んでいるものの、それだけでは使いこなせるようにはなりません。ただ、4センチの厚みの入門書を読まなければならないと思うとうんざりして、自分ひとりでは机に向かう気にならない。そこで「手を動かしてUE4を学ぼう」というテーマのコンテストを利用しようと思い立ちました。社外勉強会で知り合った仲間に参加を宣言して退路を断ち、毎朝出勤前に自宅で机にかじりついて数週間で完成。入賞はできませんでしたが、UE4 をモノにするという目的は果たせました!それから1ヵ月もしないうちに、ついに運命のVRに出合ったんです。

 ―ついにですか!それも社外勉強会でのことですか?

そうです。2016年の前半で、まだVRというものがほとんど知られてない時期でした。初めてヘッドセットをかぶった瞬間にその臨場感に圧倒され、「この技術は世の中を変える。これが僕の進む道だ!」と興奮で震えました。その後8カ月間、VRデバイスが一般発売されるのを心待ちにして購入資金を貯め、ハイスペックノートPCと合わせて30万円超で購入。すぐにVRゲーム開発に取り掛かかって試行錯誤しながら使い方を覚え、完成作品は同志が集まるゲーム試遊会に出展しました。さらに、2日程度の期間でチームメイトと協力してゲームをつくり上げる「ゲームジャム」にも参加し始めました。

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 社外勉強会での経験などは、上司や営業担当の方には報告していたのですか?

就業先の開発チームの上司に逐一報告していました。さらに、エスユーエス社内で共有されるスキルシートもこまめに更新して、自らの技術や経験をアピールするようにしていました。するとあるとき、エスユーエスの支店長から「VRを仕事にしたいなら、チャンスの多い東京に行かないか?」と言われ、迷いなく移住を決めました。

 

 

「ドはまりしている趣味だから、どんなに忙しくても自分の開発は止めませんでした」

―入社4年目、2017年の夏ですね。具体的な案件があったのですか?

いいえ、すぐにVR関連の仕事ができないことは承知の上でした。実際、東京に行って最初に就いたのは、神戸で携わっていたのと同じような大手化学メーカーの生産管理システムの開発でした。かなりハードなプロジェクトで、ふらふらになって帰宅すると毎日キッチンで晩ご飯を詰め込むように食べてベッドに倒れ込んでいました。この時期は、自らの開発時間を死守するために朝は5時起き、7時には会社近くのカフェでモーニングを食べながらノートPCに向かうという生活をしていましたね(笑)。

―そんなときでも自分の開発は止めないんですね?

私にとってゲーム開発は勉強ではなく、ドはまりしている趣味です。プレイする代わりに開発しているようなもので、つまり働いているとき以外は平日も休日もゲーム三昧。実務や勉強会で新たに知った技術をゲームに実装するのは楽しくて仕方ありませんし、その仕上がりで自分の成長も実感できます。このとき1ヵ月かけて作り上げたVRゲームもやはりコンテストに出展し、108作品中のノミネート9作品の一つに選ばれた感動は今でも忘れません。

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―着実に力をつけてきていらっしゃいますね。実務の方はいかがでしたか?

化学メーカーのプロジェクトがひと段落した3ヵ月目、担当営業の方から新しい就業先を打診されました。VRを一部に搭載した次世代3DCADを開発するという大手住宅メーカーの案件で、「グラフィック周りのことが学べそうだ!」と二つ返事で引き受けました。初めて使用するC#には苦戦しましたが、趣味のゲーム開発を効率化するWEBアプリをC#で自作して、使いこなせるようになりました。さらに3Dモデルの制作では、家を美しく見せるライティングに工夫を凝らし、グラフィックに関する技術を自らに蓄積していきました。そして10ヵ月後、とうとう大手通信会社でVR会議システムの開発プロジェクトに研究開発段階から従事することになったのです。

 

 

運命の出合いから5年でVR製品化プロジェクトをリードする立場に

―東京移住1年半弱で、国内屈指の最先端開発現場に入られたのですね。

はい(笑)。私が東京に来た2017年あたりから、全社の方針としてAI・IoT・VRといった最先端領域を積極的に開拓してくれていました。私のことも営業担当の方が「実務でもしっかり経験を積んでいるのですが、それ以上に自主的にゲーム制作に臨んでいる社員です」と強力に推してくれたようです。VRに出合ってから数えると約2年半で、期待した以上の業務に就けました。

―業務に臨んでみていかがでしたか?

実験段階で様々な試行錯誤をしている状況の中に私が入りました。まずは、プロジェクトの全体像を知るためにドキュメントを読み込み、システムの土台部分のソースコードを見ながら動きを理解していきました。並行して初めて使う開発ツール「Unity」を学んでいきます。自分のPCにも無料版をダウンロードして自宅でも触り始めると、半月後にはほぼ問題なく操作できるようになりました。そして翌月には実際の開発へ。「こんなシステムを作りたい」という要望を受けて、提案から実装まで一人で責任を持って担当しました。他にも、就業先の新卒社員に対してVR周りの知見を共有したり、大学生向けのVR開発の授業のサポートさせていただいたりと、VRに関しては様々なことを任せてもらいました。

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―VRゲーム制作の経験が、様々な方面で活きていますね。その後、開発は順調に進んだのでしょうか。

滞りなく進んで翌年の夏にはおおよそのシステムが完成しました。そして昨年4月、製品化に移るにあたって新たなプロジェクトが子会社で立ち上がり、私もそこに異動となりました。現在のプロジェクトメンバーの中で、研究開発から携わっているのは私だけ。システムを熟知しているので、就業先の社員の方々にも、その先のエンドユーザーとなるお客様にもすごく頼りにしていただいて、やりがいを感じています。

―エスユーエスでもVRの研修プログラムを作られたと伺いました。

はい。エスユーエスの研修担当の方に相談されて、すでに自主制作していたマニュアルを見せました。実務でVR開発に携わり始めた頃から「学んだことを体系化しておきたい」とまとめておいたものが役に立ちましたね(笑)。VRやARといったXR業界は今後も必ず拡大していきます。ただ予想される市場に対してエンジニアの数が圧倒的に足りていません。この研修プログラム作りもそうですが、次世代育成にも携わって私自身も業界の盛り上げに一役買いたいのです!今は、その研修を受けてVRの中で基礎的なことができるようになったエスユーエスの後輩たちが、現在のプロジェクトに3名入ってきてくれています。

小林さんに続く方が出てきているということですね!

本当に嬉しいですね。VR開発にはやはりある程度のプログラミングスキルが必要なので、未経験から挑むにはハードルが高いかもしれません。それでも今は、VRデバイスも5万円程度まで価格が下がっていますし、これを買うだけでも「VRをやりたい人」から「VRをやっている人」になれます。もしVRに興味があるなら、ぜひ自分自身に投資してください!一歩踏み出して学び始めれば、最先端分野で活躍することも夢ではありません!

 

 

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自らの市場価値を高めたいと広い世界に目を向けたことで、進むべき道を確信した小林さん。趣味と言い切るほど夢中になったVRゲーム開発が、国内でも屈指の最先端開発へ携わる道を拓きました。これからも日本のVR市場をけん引されるご活躍を期待しています!ありがとうございました。

 

(E-30!!!編集部)

 

 

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