グローバル成長率は78% AR/VR市場に飛び込むなら今。「VRイノベーションアカデミー京都」誕生!

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古(いにしえ)の都、京都。およそ1200年の歴史を持つその地に、最先端のAR/VRを学べる学校「VRイノベーションアカデミー京都(VRIA京都)」が開校します。場所は太秦「東映京都撮影所」。京都府全面バックアップの下、映画「仁義なき戦い」やテレビ時代劇「遠山の金さん」等をはじめとした日本の映像文化の聖地に、その先進技術の拠点が生まれます。こちらを運営するのは株式会社クロスリアリティ。エスユーエス社と、数多くの専門学校を手掛ける三幸学園が出資を行い共同設立し、関西で初めて本格的なAR/VRエンジニア育成を目指します。提供されるカリキュラムはアメリカ「EON Reality社」の最先端プログラム。世界各国から講師もお迎えして、この春から講義をスタートします。

 

早速、5月11日(月)予定の開校に向け、クロスリアリティ社で開校の準備を進める野上正義さんと、金山泰明さんにAR/VRの魅力やご自身の夢を聞いてみました。

 

◆Profile◆

■野上正義さん(41歳)

在学中から企業ECサイトの構築や通販サイトの運営等で、BtoC事業の経験を積む。培った営業やマーケティングの知識を生かして、今回の新規事業に貢献していきたいと考えている。

■金山泰明さん(30歳)

2012年に新卒でエスユーエスに入社し、当時流行し始めたソーシャルゲーム等の運営・保守をおこなう。後に、建築系の会社で住宅設計システム関連のSE等を経験し、直近まで他社からの受託開発案件を手掛けていた。

 

2023年の市場規模はおよそ17兆円。今後爆発的に伸びるAR/VR市場

 

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立上げに携わる、野上さん、金山さん



編集部:「VRIA京都」を運営するクロスリアリティ社では、どのような業務に携わる予定ですか?

野上:既に、私はプランナーという立場で営業に近しい業務をおこなっています。例えば、企業や教育機関に対して、AR/VRを活用したソリューションの提案営業を進めていく予定です。また、並行してVRIA京都の生徒募集を現在担当しています。

金山:私はデベロッパーという形で加わります。あと5年程は最先端の開発現場にいたいので、とても楽しみです。一方で、先々のキャリアを考えると、いずれ講師として生徒を教えるタイミングが来るかもしれません。現在は視野を広げておくためにも、「VRIA京都」開設に向けた業務はなんでもこなす毎日です(笑)。

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アカデミーの建物デザイン

編集部:まずこのAR/VR市場が、今後どれほど成長する見込みなのか、教えていただけますか?

野上:現在の日本では、まだゲームとかの個人利用が多いのですが、世界に目を向けると急激に法人利用が増えており、2019年に1.9兆円だった市場が、4年後の2023年には約17兆円規模まで成長するとみられています。企業における支出も個人のおよそ3倍になる見込みです。

編集部:日本は世界にかなり遅れをとっているようですね?

野上:世界におけるAR/VR領域の市場成長予測はCAGR(年複利成長率)78%程度であるのに対して、日本市場の伸び率は20%台と、アメリカを始めとする先進国に置いて行かれているのが現実です。

編集部:なぜ、ここまで成長率に差が出ているのでしょうか?

金山:日本ではゲームやアニメーションといったBtoC領域は、それなりに活況ではあるものの、更に大きな市場を持つ産業分野への導入、BtoB領域への展開は、まだ始まったばかりなのです。

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日本ではゲーム業界のイメージが強いVR技術

編集部:世界では各産業分野への導入で、次々と成功事例が出てきているようですね。

野上:はい。面白い事例としては、米国小売大手のウォルマートですね。従業員数230万人を誇る巨大な企業ですが、VR技術を本格的な従業員教育に生かして成果を発揮しています。なんと、導入したヘッドセット端末数は約17,000台と聞いています。彼らは実際の店舗に立つ前に、ブラックフライデー等のセール対応や、事故や災害時の対処法等を疑似体験することができるのです。この教育を受けた約70%が、他のトレーニングを受けた従業員よりも高いパフォーマンスを発揮したといいます。

編集部:この規模で均一の従業員教育を同時におこなえるわけですから、その効果は計り知れないですね。

野上:このような成功事例が広がることによって、AR/VR市場は爆発的に成長を遂げています。求人需要で見てみても、アメリカのAR/VR領域の人材募集数は、対前年比でいうと14倍に達したという発表がありました。このように、圧倒的に伸びている業界なのです。それにより労働条件の改善も進み、エンジニアにとって人気の業界となりつつあります。今の日本では、まだ実感できませんよね。

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流通業でもVRによるトレーニング始まった

編集部:それだけ求人需要が伸びていることで、待遇も改善し、人が集まるという好循環に入っているわけですね。ではなぜ、日本では人材が集まらないのでしょうか?

金山:私は、技術革新のスピードが早いために、体系的に学ぶ場所が少ないというのも原因のひとつだと考えています。日本国内では東京まで行かないと、こうした産業分野のAR/VR技術は学べなかったし、もっというと最先端技術はアメリカでないと手に入れることはできません。

編集部:人材育成の場も不足しているのですね。他の国はどうなのですか?

野上:例えば、イギリスのマンチェスター市ではAR/VR技術者の教育にとても力を入れていて、学費負担までしてもらえるそうです。また、フランスやシンガポール等でも産学連携が進んでいて、はるかに日本よりも学習環境が整っています。

金山:つまり、各国とも国策としてAR/VR領域のエンジニアを育てているというわけです。

さまざまな産業分野で急成長するAR/VR技術

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教育現場にも広がるAR/VR技術

編集部:さて、ここからはもう少し具体的な事例を伺っていきたいと思います。今回のAR/VR技術というものは、ゲームや映像アトラクション等で一般の方々も体験することがあると思うのですが、それ以外の用途としてどのようなものがあるのか、教えてください。

 金山:最初は宇宙開発や災害対策等、非現実的な空間を必要とする産業分野で活用が始まりました。災害時の訓練とかで導入する自治体も増えていると聞きます。やがて現在では、医療や教育、流通といった分野にまで広まりつつあるといった状況でしょうか。

 野上:VRの教育現場への導入も始まっていて、京都ですと「花園中学高等学校」では、既にカリキュラムが提供されていると聞きます。今まで数学の教科書では伝わりづらかった立方体等の展開図形が、立体映像を見ることでとても理解しやすくなり、正答率が格段に上昇したそうです。

 編集部:なるほど。紙で実際に立方体を作りながら授業を受けた記憶があります。それが複雑な立体でも、簡単にできてしまうというわけですね。

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医療の領域にも革新が起きている

 野上:それ以外にも、VR技術は医療現場への導入が始まっています。わかりやすい例でいうと外科手術シミュレーションですね。かつて、人間の臓器は人それぞれ形や大きさが異なっていて、実際に開腹してみないと、細部まで把握することが不可能だったといいます。これをCTスキャン等で3D映像化して、その患者手術のリハーサルを行うなんていうこともできるそうです。

金山:最近では2Dを一瞬で3D化するAI技術も研究されていますので、こうした導入事例はさらに加速していくと思います。

 編集部:医療現場などは、とても想像しやすいですね。常にリスクと隣り合わせですから、こうした需要があるのは納得できます。一方、ARの領域ではどのようなものがあるのでしょうか?

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ARを活用した工事作業アシストも始まった

 野上:VRが現実には存在しない世界に入り込むのに対して、ARは現実空間を利用します。その分、すぐに現場でパフォーマンスを発揮できるという特性を持っています。

製造業はもちろんなのですが、土木・建設業、流通業等、さまざまな現場にもどんどん導入されていくのではないでしょうか?例えば、土木現場の施工管理、配電設備のメンテナンス等、昔は先輩の背中を見て覚えていた仕事も、少子高齢化の時代に突入し、時間をかけて若手育成をおこなうことはできないというのが現実です。彼らに対してはARを活用し、実際見えている空間に手順を示すなどの作業アシストを行うというのは、とても現実的な活用方法です。

言い換えると、その人のスキルを一気に底上げしてしまうことが可能になるわけです。

 編集部:それはすごいですね。工場の組み立て作業とか、これを使えば研修時間を一気に短縮できるわけですね。すると、今までは難しかった職人技みたいなものも再現できてしまうということですか?

 野上:そうですね。極端な話になりますが、神の手を持つ名医の指の動きとか、五つ星シェフの調理手順とか…。数値化さえできれば、再現のためのアシストができてしまうということですね。これはスキルの知識移転、ナレッジトランスファーといわれていて、企業としても費用対効果に優れたものであれば、導入が進んでいくのではないでしょうか。

 編集部:途絶えようとしている伝統工芸の知的保存とかにも役立ちそうです。とても夢のある話ですね。

AR/VR領域のエンジニア育成は待ったなし

編集部:さて、AR/VR技術を担うエンジニア不足の解消が、「VRIA京都」開設の目的のひとつだと思うのですが、具体的にはどのような方々を育てていきたいのでしょうか?

 野上:即戦力となる人材の育成ですね。そのために、まずは開校にむけて優秀な生徒を集めたいと思っています。過去の日本に於けるAR/VR人材といえば、ゲームを中心としたエンタテーメント領域一色だったのです。もっと市場規模の大きな産業への導入が現実となり、需要が一気に広がった結果、深刻な人材不足に陥ったというのが私の印象です。医療であったり、教育であったり、さまざまな産業領域に対応できる能力の人材を一刻も早く作りたいと考えています。

 

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夢を語る野上さん

金山:今まで、関西で最先端のAR/VR技術に触れられる機会はほとんどありませんでした。東京に一極集中していたわけです。京都はかつて様々な産業を生んだ、海外の方々からも注目を浴びる歴史ある街です。そうした背景を持つ京都の町で学びたい、働きたい、暮らしたいという人に是非来てもらいたいと思います。そして、エンタープライズ向けの最先端のAR/VR技術をもって、既に始まっている少子高齢化の世界を救える人材を育てたいと思います。

 

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ヘッドセットをつける金山さん

編集部:最後に、開校に向けた抱負や、これから出会う生徒達へのメッセージをお願いします。

野上:日本の少子高齢化社会を支えるためにも、AR/VR人材を輩出していくのが急務だと思っています。その方々が多くの企業や教育機関にAR/VR技術を使ったソリューションを提供できる流れを早急に確立したいです。皆の力を合わせて、未来を拡張しましょう。「VRイノベーションアカデミー京都」入学生募集中です!

金山:このVRIAはゲームではなく、産業に特化した知識を身に付けられる関西唯一のアカデミーで、「京都発」のAR/VRエンジニア育成機関となります。私自身もワクワクする感情を抑えることはできません。いち早くAR/VR業界に来てもらって、スマホが爆発的に成長した時のように、この時流にのっていきましょう。

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いよいよ5月11日(月)開校予定

まとめ

インタビューを終え、率直にとても意義深い技術だと思いました。身近なところでいうと、車の運転アシストにAR技術が搭載されていくでしょうし、あと数年以内にAppleから多機能なスマートグラスが発売されるというニュースも耳にしました。昔のSF映画や漫画で描かれた世界が現実になろうとしています。しかし、見落としてならないのは、これらの技術は非常に広範囲な産業に応用可能だということです。少子高齢化に向かう日本においては、これらの技術を駆使して、より住みよい国を作っていくことが最も大切です。ここ京都からどのような人材が生まれ、育っていくのか楽しみにしたいと思います。

このVRIA京都をはじめとするAR/VR技術のレポートは、今後も引き続きお届けしたいと思っています。是非、ご期待ください。

 

(E-30!!!編集部 上村)

 

 

 

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