株式会社エスユーエス
関西第一ソリューション部
永井 満彬(Nagai Michiaki)
前職は組込みエンジニア。2021年4月から自費でVRイノベーションアカデミー京都(VRIA)にてXR技術を学んだ後、同年11月に中途入社。業務のかたわら自己研鑽のため多いときには月5本の個人開発を行い、その報告書を会社提出し続けた結果、入社1年半で希望のXR業務へ。4月より講師として、Unity(XR)勉強会をスタートさせる。
社会人5年目の学び直し。くすぶっていた夢への一歩を踏み出した
―4月から開催されるUnity(XR)勉強会。どんな場にしたいですか?
「自分で何かを作りたい。でもどうすればいいんだろう…」そんな悶々とした気持ちを抱えている方が、Unityを使ったコンテンツ開発を通して一歩踏み出せる。そんな勉強会にしたいです。
―まだ入社1年半弱なんですよね。26歳で会社を辞め、貯金を切り崩してVRIAで学ばれたとか。
はい。VRIAでXR技術習得に没頭するため、大阪の技術派遣の組込みエンジニアを辞めました。京都への引っ越し、約100万円の学費、その他諸々の費用全てを貯金から切り崩して、カリキュラムを修了した半年後には貯金もほとんど底をついていました。
―なぜそこまでして?
大学では情報科学と教育学を学び、「教育に関わるコンテンツを作りたい」と思っていました。ただ実現できないまま就職して4年、ずっと想いはくすぶったまま。そんなときにVRをふと体験して「自分のやりたかったことはコレだ!この技術ならおもしろいものが作れる」と心が揺さぶられました。親族や友人、前職の上司にも相談して「本気でXRエンジニアを目指す」と決断したんです。
VRIA卒業後にエスユーエスを選んだのもXRに力を入れているから。最初の就業先はXRとは無関係でしたが「実務経験を積むために仕方ない」と割り切り、就業時間外にコツコツと個人で開発を続けました。
―XR開発ツールであるUnityの勉強会にも参加していらっしゃいますよね。
猛スピードで進化するXR技術に乗り遅れないためです。社内で同じ志を持つ仲間と情報交換できたり、互いの開発を評価し合えたり。何より孤独に取り組むよりもモチベーションを保ち続けられて、成果物もブラッシュアップしていけます。お陰で楽しみながら勉強を続けられました。
さらに参加していくうちに「もし自分が講師として教える側に回ったら、自然とトレンドも追えて成長も早いはず!」と思い至ったんです。すぐに会社にも掛け合いましたが本気だとは思ってもらえなかったみたいです。
自分の努力と技術を会社へアピールし続けた
―まだ入社半年ちょっとですよね。すごいスピード感ですが、焦りのようなものがあったのでしょうか。
2社目の就業先でもXRを仕事にすることは叶いませんでした。しかも契約期間は無期限と言われ、徐々に「いつになったら…」という不安を感じ始めていました。
でも、技術的にも経済的にもここで底力をつけたいと自ら選んだ道。勉強会講師は一旦あきらめましたが、「少しでも早くXR業務に就けるよう自分の努力や技術力を知ってもらおう」と、今度は自己研鑽として開発しているXRコンテンツを報告書にまとめて会社に提出し始めました。
―自己研鑽はどのくらいされていたのでしょうか。
たいてい毎日、20時から0時くらいまで。土日もどちらか1日は開発に費やします。週平均30時間くらいでしょうか。
スマホ向けのARアプリ、MR端末向けのMRアプリ、多様なプレイ環境を想定したブラウザゲームなど、未経験の技術に次々に挑戦していきました。
―開発漬けですね。業務との両立は大変ではありませんか。
疲れを感じたらすぐに休みます。でも、好きなことなので苦に思ったことはありません。実はこの習慣はVRIAで学んでいたときから変わっていなくて、当時も16時半に授業を終え、18時から深夜2時くらいまでずっとUnityを触っていました。
入社後はペースを緩めていましたが、会社に報告書を提出し始めるとエンジニアリング課の方だけではなく、営業担当や部長級の方までさまざまな方が感想や助言をくださって、気づきがたくさんあるんです。それでギアが上がりました。社外の開発イベントにも参加し始めて、最低でも月2本、多い時には月5本のコンテンツをコンスタントに完成させていきました。
―技術力もどんどん高まっていったのでは?
助言を活かして完成度を上げるたびにできることが増えていく実感がありました。ただ、いまだXR業務に就けないことへのジレンマも高まる一方。それで、入社2年目を迎える前に、今後の方向性を相談したいと会社に伝えたんです。
ついにXR領域の業務への道が開けた!
―どうなりましたか?
すぐにエンジニアリング課で面談の機会を設けてもらえました。そしてその場で、今まで提出してきた20本近い報告書を改めて上の方にも見ていただけたんです。
「こんなに頑張っているんだから、やっぱりXRをやらせてあげたいね」。その一言で、ついに目の前が開けました。さらに、会社全体のXR事業推進への意見を求められることも増えていき、年明け1月、今度は会社側から「勉強会の講師をやりませんか?」と提案されたんです。
―半年前とは逆に会社側から講師の話があって、改めて引き受けられたのですね。
報告書の提出は思った以上に響いていたみたいです。ただ、いざ勉強会準備に取り掛かると、技術トレンドの速さに苦戦しました。使用予定だった定番ツールが1ヶ月前にサービス停止になっていたんです。そのツールの使用を前提に教材を作るつもりだったので焦りました。急遽代わりのツールを探しても重すぎたり、汎用性が低かったり。「これなら!」と思って使い始めてみれば、途中でやりたいことができないとわかって開発を仕切り直したり。
それでも5つほどツールを試して条件をクリアしたもので開発を進め、海外のサイトも調べて最新情報も反映しながら、約3週間で100枚以上のスライドをつくり上げました。
―100枚!なぜそんなに丁寧な教材をつくるのですか?
VRIAの講義では、操作に手間取って少し目を離した隙にどこをやっているかわからなくなることが何度もありました。また自己学習でもあと一言の解説がないせいで些細な箇所でつまずき、半日を無駄にしたこともあります。そんな小さな壁にぶつかり続けると挫折してしまう人も多いと思うんです。だから自分が開発して確実にできたことだけをスモールステップに分けてまとめ、「見れば解る」ような教材に仕上げました。
この方法で作っていくと自分が開発に詰まると教材づくりも止まります。詰まったところを調べざるを得ないので、自分の学びにもなっていくのが楽しいですね。
あのとき、一歩踏み出したから今がある。勉強会でお待ちしています!
―3月からは実務でも念願のXR開発に臨んでいらっしゃいますね。
約1ヶ月で3件の案件を手掛けました。初めてお客様に向き合うと、そのニーズは想像以上に多種多様。自分が持つ知識や技術では応えられないことも多く、Unity以外のツールの習得も始めました。新技術も次々に出てくるので、どんどん勉強していかないとこの領域で仕事をしていくのは難しいと改めて痛感しているところです。
―とても大変そうですが、それでもXRでやっていきたいと思われるんですね。
はい。XRで教育系コンテンツを開発するという夢に向け、常に最新の技術トレンドをキャッチし、1歩でも2歩でも歩みを進めたいと思います。それによって会社の利益や業界の発展に貢献できれば、こんなにうれしいことはありません。
―このインタビューが掲載される頃には、勉強会も始まっていますね。
実は、前にも友人に対して個人的にUnityを教えたことがあるんです。その経験からも、対話しながら進めていくことが大切だと感じています。ゆっくりでも良いから、みんながついて来られる勉強会にしようと思っているので、興味のある方はぜひのぞいてみてください。
―最後に、若手エンジニアへメッセージをお願いします。
「一歩、踏み出してみる勇気」の大切さを痛感しています。小さな一歩でも積み重ねれば、大きな成果につながります。一人で続けるのが難しければ、興味や目標が近い仲間と出会える場に行ってみてください。社内には望年会やエンジニアの集いもありますし、もちろん勉強会もそのひとつです。周囲からたくさんの刺激を受けて、夢がみつかったり、希望の道が開けたりすることもありますよ!
(E-30!!!編集部)