連載企画『リーダーエンジニアの“これまで”と“これから”。』の第2弾!
後輩育成に悩みながらもチームを率いろうと奮闘している人、 マネジメントスキルを伸ばしてゼネラリストとしてのキャリアを築いていく決意をした人など、さまざまな岐路に立つエスユーエスのエンジニアリーダーにインタビューを実施。
リーダーになった理由や苦悩、これからの目標、そしてその方々が影響を受けた憧れのエンジニアを紹介してもらい、次号はその方を取材するというリレー企画となっております。
株式会社エスユーエス
関東第一ソリューション部 エンジニアリング課
山本 龍生(Yamamoto Ryusei)
2017年に新卒で入社。大手自動車メーカーに配属後、エンジニアの教育部署にてCATIAの講師を務める。現部署に異動後、テールゲートやトランクの
設計を担当。クライアントからの高い信頼とエスユーエス社内の活躍が評価され、2019年度の望年会で表彰される。
入社4年目。手がけた車がついに発売!
―大髙さんの憧れのエンジニアということで、今回は山本さんを取材させていただきます。よろしくお願いいたします!
恐縮です…(笑)。上手く応えられるように頑張ります!
―もうすぐ入社4年目ですね。これまで、どのようなお仕事をされてきたんですか?
入社後、大手の自動車メーカーさんへ配属されて、初めは設計ツール開発やエンジニアを教育する部署で、そのメーカーに入社した新人さんにCATIAを教えていました。院卒の方も多かったので、年上だし、でも同期だし、何より私自身も新人だし、と最初はとまどいも多かったことを覚えています。
―CATIAはもともと得意な方だったんですか?
全然(笑)。自分が教えることになるプログラムを2ヶ月で詰め込みました。最初はできるかな?と不安でしたけど、新人さんが理解してくれているのが分かってくると、徐々に教えるのも楽しくなってきましたね。自分の理解も深まりますし。その後、1年経ったくらいに部署が異動になって、テールゲートやトランクの設計をする担当になりました。
―ここですか?
そこです!ちょうどこの間、担当した車が発表されたんですよ(笑)!約2年かけてつくったものだったので、実際に形になると、やっぱり感動しました。
―2年。それは感慨深いですね!大変なことも多かったんじゃないですか?
車って、ボディとかドアとか、各パーツごとに担当が分かれてるんですが、自分の中でこうしたい、あの形でいきたいっていうのがあっても、他のパーツ的には違う方法やデザインの方がやりやすいっていうことも結構あって、そのたびに交渉するのは大変だったなと思います。
仕事じゃないのに、「勉強会」を実施する理由とは?
―お仕事もかなり忙しそうですが、山本さんは配属されてくるエスユーエスの新卒をまとめたり、勉強会なども開催されていると伺いました。
そうですね。社歴も長くなってきたので、残業など働き方を管理や指導したり、仕事の相談にのることも増えてきて、そういう面でもっと若いエンジニアの成長に貢献できないかと考えるようになって、「勉強会」を開催しています。教えるということが楽しくなってなかったらやってなかったでしょうけど…(笑)。
―なるほど。「勉強会」では、どのようなことをされてるんですか?
エンジニアの育成を担当している部署の方と協力して、午前中に「4力」の講義、午後に設計の考え方を学ぶというカリキュラムで月に1回開催しています。新卒~若手エンジニアの方を対象にしていて、毎回5~10人くらい参加してくれてます!
―山本さんは、どこを担当してらっしゃるんですか?
私が担当しているのは午後の部です。講義だけだとつまらないので、ディスカッションも交えて変化をつけるように意識しています。
これまで「レトルトカレーや新機能ボールペンの開発・生産・販売を考えよう」というテーマがありました。カレーでいうと、年間3万個生産・1,000円で販売・コスト3,000万円で開発・今までにないレトルトカレーというような条件をつけて、製造までを設計してもらいます。一見機械分野とは関係なさそうなんですが、参加者にとってみれば設計の考え方という面では、こうしたちょっと抽象的なテーマの方が、楽しいかなと思ってやっています。
―こうした企画は、毎回山本さんが立ててらっしゃるんですか?
そうですね。ネタ探しは常にやってますね、何なら今も(笑)。その中から最終どのテーマでやるかは、当日のメンバーを見て、新卒が多ければちょっと簡単なあっさりしたものを、先輩がいるときはアドバイスしてもらう前提で、少し難しいテーマを選ぶようにしてます。
講義中に寝ちゃうのは、楽しくないからかもしれない。
―取材に集中お願いします(笑)。楽しさを大切にされている気がしますが、理由はありますか?
初めは先輩社員がCATIA講習として勉強会を開催していて、その手伝いをしてたんです。その講師を引き継ぐことになり、見よう見まねで講義をしてたんですけど、寝ている人が結構いて…悔しかったんですよね、「あぁ楽しくないんだな」と。当時は4時間ぶっ通しでしゃべり続けてましたから…そりゃ眠いですよね(笑)。これは何か仕掛けを作らないと、受けてくれてる方にも申し訳ないなと思ったんです。
―今なら、学校の先生の気持ちがわかりますね…。
本当ですよね…。毎日授業している先生、尊敬です(笑)。そう思っていたある日、たまたま講義内で問題を出して、ディスカッションをやってみたことがあって、それがかなり盛り上がったんです。「これだ!」って思いました。
―それで今のスタイルになったんですね。コロナウイルスの関係で、対面での勉強会は難しくなったと思うんですが、今はどうしてらっしゃるんですか?
感染が拡大して、しばらくの間は中断していました。ですが、このような状況だからこそ、スキルを上げるチャンスですし、普段は参加できない方も受講しやすいのではないかと、社内に掛け合って、オンラインでの開催に踏み切りました。
このご時世だからこそ、オンラインでも開催する必要がある。
―オンラインでの開催はいかがでしたか?
新卒の方が多く参加してくれたんですが、入社時からコロナ禍だったこともあって、入社後の研修も在宅、配属されてからも在宅で、誰かと一緒に何かをするみたいなこともままならず、フラストレーションも溜まってるんだと感じました。
―どうしてそう感じたんですか?
「会社の人と関われてよかった」とか「誰かに何かを教えてもらうという機会も少ない中で、こうした場はありがたい」、「設計したいけど結局研修みたいな内容が多くて、実際の業務や考え方に触れられてよかった」という声をいただいたからです。やっぱりいろいろ悩みもあるみたいで、「相談にのってください」と言われることも増えたような気がしています。それに伴って、「困ってることない?」と尋ねることも増やしましたね。
―やっぱり、頼られるキャラなんですね!
こういう状況下で、気軽にコミュニケ―ションをとれる先輩がまだ少ないんだと思います。私は年齢も近いので話やすいのかもしれません(笑)。、新卒の方が相談しやすい機会という意味でも、勉強会はオンラインを含め、継続していきたいと思いましたね。
―今後、やってみたい企画はありますか?
自動車部品など実物を触る機会をもっと増やしたいなと思っています。ネジをしめるとか、その部品をスケッチするとか。
―それは仕事とどう結びついていくのでしょう?
将来は設計の仕事をしたいと思っているエンジニアが多い勉強会なので、コスト面や設計後の工程を理解してもらうことで、また一段彼らのスキルがあがると思っています。
ボルトとかネジの形状やサイズとかを知っていると、触っただけでそれがどのくらいのコストがかかるかわかるようになりますし、メンテナンスのことまで考えて、どの部品をどう溶接するのが設計上ベストなのかも考えられるようになるんです。スケッチは交渉のときに役立ちます。交渉のときにいちいちCATIAで作成してたら時間もかかりますし、スケッチなら他の人とその場で同じ内容を共有できるようにもなりますから!
若いエンジニアに"仕事に活かせるスキルを身につけてもらう"のが私の目標。
―今、困っていることはありますか?
講師を増やしたいですね。
―どのような方が講師に向いていると思いますか?
コミュニケーション能力の高い人ですかね。守備範囲の広い人といいますか。やっぱり、参加者にはいろんなタイプがいますから、上手く場を回せるトーク力があると最高ですね。あと、私は車について話すことはできるんですが、他の設計の話ができる人にもぜひお願いしたいですね。
―専門以外の設計を理解することも大切なんですか?
新卒の頃っていろんな例を聞くだけでも楽しいでしょうし、そこで得た知識は思わぬところで「あ、あれが使えるかも?」と、活かせたりすると思うんですよね。船舶とか家電とか、やっぱりそれぞれに設計の考え方って違ってて。例えば、車を設計している人にボールペンを設計してもらうと、車は普段外で使うことを前提にしているから、材料や作り方もそういう前提がにあるでしょうし、家電だと家の中なのでまた違ったものができあがったりします。
―なるほど。講師として、またエンジニアとしての今後のプランはありますか?
講師は、できる限り続けていきたいです。、いつか「山本さんに教えてもらったことが会社で役に立ちました!」って言われるのが今の目標ですかね(笑)。
エンジニアとしては、若いうちにサプライヤー、より車をつくる現場で仕事してみたいと考えています。今は、対外交渉がほとんどなので『現場の力』をつけたいんです。両方のことを理解している設計者になるために、必要なキャリアパスだと考えています。そういう意味で、このアウトソーシングの働き方はありがたいですね。
"常にビジョンが明確"な私が憧れるエンジニア。
―では、ここで大髙さんからのご質問です!ずばり、山本さんが思う良いリーダーとは?
話しやすい・頼ってもらえる・そういう雰囲気をつくれる人ですかね?リーダーとして周りの人と関わる上で、『すべてはコミュニケーションから』だと思っています。私は、自虐ネタを突っ込んだりして、先に自分を見せるということを意識してますね。お酒で失敗した話とか(笑)
―もう1問。周りに協力してもらえるようにするにはどうすればいいと思いますか?
自分から先に協力すること!これに限ると思います。自分は協力しないのに、協力して欲しいは虫のいい話なので、まずは自分からを、私は心掛けています。
―では、山本さんが憧れる、エンジニアの方を紹介してください!
同期になるんですが、AI受託開発の仕事をしている原さんですかね。会社のこと、仕事やキャリアのこと、しっかりとしたビジョンがあるところがすごいといつも感心しています。
―では、原さんに聞きたいことを教えてください。
自分のやりたいこと、最終的なビジョンには近づけていますか?ちなみに私は近づいてます(笑)。
―本日はお忙しいところありがとうござました。
ありがとうございました!
前回、お話を聞いた大髙さんと同様、社内の大望年会で表彰されていた山本さん。自分の仕事だけでなく、現場での後輩の取りまとめや勉強会の開催まで携わっているとは知らず、その行動力に驚きました。また勉強会の至るところに、若いエンジニアの成長を第一に考えられた企画・運用方法が組み込まれていて、山本さんの育成に対する思いを強く感じ取れた取材となりました。
それでは、次回もお楽しみください。
(E-30!!!編集部 猪熊)