2019年末から瞬く間に世界に広がった、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、日本政府が発令した「緊急事態宣言」が5月25日をもって解除されました。
政府が「人と人との接触機会を8割削減」するよう呼びかけたこの施策は、屋内での至近距離の会話や満員電車を避ける必要性があり、その対応策としてテレワークや在宅勤務を導入する企業が東京都HPによるとなんと62.7%に達したそうです。テレワークの推進は、既に2016年から政府によって取り組まれていましたが、その時点での企業の導入率は、総務省の発表で19.1%程度。今回の一件は、多くの人の働き方を大きく変化させてしまいました。
メンバーをまとめるリーダーたちは、今後どのように彼ら彼女らと接していくべきか、なかなか難しい局面に立たされていきます。
- この在宅勤務率を、あなたは予見できましたか?
- 企業は在宅勤務をどう捉えてるのか
- 在宅勤務に潜む家庭の危機...「コロナ離婚」って何?
- 実は仲が深まるチャンス?「コロナ離婚」に騙されるな!
- 不安ならば、ITエンジニアをマネしてみる?
- リーダーにとっての『ニューノーマル』とは?
この在宅勤務率を、あなたは予見できましたか?
ここに2020年4月時点で在宅勤務を実施している人を職種別に見たデータがあります。
一気に進んだ在宅勤務ですが、今回の緊急事態宣言を機にシフトした割合が最も多いのは、企画・マーケティング職で55.3%、次いでITエンジニア(システム開発・SE・インフラ)の42.1%、営業系の31.8%、エンジニア(機械・電気・電子・半導体・制御)の31%という結果になっています。
さらにITエンジニアは「以前から在宅勤務をしている人の割合」が21.7%と、他の職種と比較しても一番多く、在宅勤務者が半数を超えていることがわかります。
米国のDingel and Neiman(2020)による研究でも、仕事の対象や職場環境についての物理的な側面で在宅勤務が可能な職種の1位は「Computer and Mathematical=コンピュータ・数理の職業」で100%可能としており、今後さらに割合が多くなっていく職種であると言われているのです。
企業は在宅勤務をどう捉えているのか
実は今回の在宅勤務が成功したことから、世界有数のIT企業である「Google」と「Facebook」は、自宅で作業を遂行できる大半の従業員に対し、2020年末まで継続させることを発表しました。さらにSNS大手「Twitter」は全世界の従業員4,000名以上対し、在宅勤務を永遠に認める方針を明らかにするなど、思い切った施策を取るIT企業も増えてきているのです。
日本でも、携帯通信大手KDDIが緊急事態宣言解除後も出社率を最大3割まで、オフィスでの座席占有率を5割にすることを発表。動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは、基本的には在宅勤務で働き、会議などの必要に応じて出社もできるという体制を導入すると発表しており、海外と同様の動きをする企業が増えていくと思われます。
こうした発表に「時代の転換点になる」と指摘する専門家もいるように、多くの企業にとって在宅勤務が当たり前となる日がもうそこまで来ているのではないでしょうか。
在宅勤務に潜む家庭の危機...「コロナ離婚」とは?
ただ在宅勤務が増えれば、当然家で過ごす時間が増えるため、家庭にも少なからず影響が出ることが考えられます。その代表として今話題となっているのが「コロナ離婚」です。
「コロナ離婚」とは、コロナウイルスによる外出自粛や在宅勤務により、パートナーと一緒にいる時間が増えたことで、お互いの価値観の違いがストレスになり離婚してしまうことをいいます。
すでに家庭を築いている、もしくは新しい生活を始める世代でもあるE-30!!!読者の皆さんにとっては、決して無視できないニュースワードではないでしょうか?
Twitterでは「#コロナ離婚」と付けられた投稿が目立ち、夫婦間の愚痴がつぶさにつづられています。一人の時間が取れない、家にいるのに家事や子育てを手伝ってくれない、相手の仕事中やWEB会議中に音を立てないよう気をつかって居心地が悪い、手洗いや消毒を言わないとやらず危機感のズレを感じたなど、内容はさまざまなようです。
ニュースや報道でも目にする機会が増え、「コロナ離婚」に対する不安が高まっているようですが、パートナーと一緒にいる時間が増えてしまう在宅勤務は、本当に家庭を壊してしまう働き方なのでしょうか?
実は仲が深まるチャンス?「コロナ離婚」に騙されるな!
全国の既婚女性500名以上を対象にした「コロナ自粛が家庭に与える影響」調査によると、パートナーと一緒に過ごす時間が増えた346名のうち、なんと67%にあたる233名が「一緒にいる時間が増えて嬉しい」と回答していることがわかりました。さらに別の設問では、約6割にあたる211名がコロナ自粛によって「夫婦仲は変化していない」、約3割にあたる105名は「夫婦仲が深まった」という驚きの結果も出たのです。
在宅勤務よる家庭時間の増加で「コロナ離婚」に至るケースは思いのほか少なく、むしろお互いの関係性を見直し、仲を深める機会になった夫婦が多いのかもしれません。
ただ、全体の約1割(30名)という少数派ではあるのものの、「仲が悪くなった」と回答した方のおよそ半数である14名は「離婚を考えるようになった」など、一気に深刻な問題に発展していることも分かっています。
「一人の時間がなくてストレス(落ち着かない)」「家事(子供の世話含む)が増えた・パートナーが手伝ってくれない」という理由が影響しているようですが、少なからず夫婦仲に悪影響が出ていることを考えると、在宅勤務とパートナーの望む家庭環境の両立は今後の結婚生活において、避けては通れない課題となってくるでしょう。
不安ならば、ITエンジニアをマネしてみる?
在宅勤務と家庭の両立が上手いという面では、以前から在宅勤務率が最も高く、実は家庭を大事にする人が多いと言われているITエンジニアを参考にしてみるのはいかがでしょうか?
20~50代のシステムエンジニアをしている既婚男性300名を対象に行ったサクラグの「エンジニアの夫婦間についてのアンケート調査」では、夫婦仲について「かなり良好」「まあまあ良好」と回答した人が88.8%、「配偶者のことが好き」と回答した人が72.4%と、実際のアンケートからも家庭円満なことがうかがえます。
「ノマドワーカー」「コワーキング」など、これまで数々の新しいライフスタイルを世の中に提唱してきた彼らは家事にも積極的らしく、「段取りを考え、効率よくやるという点は仕事に似ているし、それが達成感にも繋がる」「“なにか”をしている待ち時間で、違うことを並行してこなすことは仕事にも繋がる」など、家事を工夫することによってエンジニアの能力が磨かれると前向きにとらえている人も多いようです。
このように「家事や育児を手伝ってくれない」という妻の不満を解消していることも、夫婦円満の秘訣なのでしょう。
リーダーにとっての『ニューノーマル』とは?
この在宅勤務は、「満員電車に乗らなくて良い」「通勤時間が減り、自由に使える時間が増える」といったメリットがあり、ワークライフバランスを整えるのにとても有効な働き方といえます。
家庭に費やす時間が増え、円満な関係が築けるということはもちろん、自分のキャリアデザインを実現するための資格取得や人間力を身につける時間を取ることができ、キャリア形成にも重要というわけです。
NIKKEISTYLEの調査によると、今回在宅勤務を実施した7割以上の人が「コロナウイルス終息後も在宅勤務を続けたい」と思っていることがわかっています。在宅勤務を一般化しようとしている企業が増加していることを踏まえると、世の中は前に戻るのではなく、大きく変化しようとしているのです。
こうして働き方が変われば、おのずと生活も変わり、「新しいライフスタイル」が『ニュー・ノーマル(新常態)』として日常に形成されていくことになるでしょう。新しい環境に戸惑う人も多い中、リーダーという役割を担っているみなさんに今求められていることは、この変化に柔軟に対応し、周りを率いていくことなのではないでしょうか。
「誰も予想ができない未来がやってきた。知恵を絞って乗り切ろう。」と声高なリーダーがいます。
「本来あるべき未来が、一気に実現したのである。」と考えるリーダーもいます。
さて、みなさんは今をどのように捉えているのでしょうか?
この機会を、これからのリーダーに必要な能力を習得できる時だと前向きに捉え、未来へ歩んでほしいと思うのです。
(E-30!!!編集部 猪熊)