個人の力量がまざまざと…「テレワークで働く」ということについて

世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスは日本中のビジネスシーンに大きな影響を与えてきています。感染者拡大を防ぐために、政府は企業に対してテレワークを奨励し、これに呼応する形で2月下旬から、多くの企業で導入が始まっています。そこで、このテレワークが私たちの働き方に何をもたらすのかを考えてみました。

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今さら聞けない、テレワークってなに?

まずは「テレワーク」という言葉の定義からみていきしょう。「テレワーク」は英語では「telework」と表記されます。「tele」は「テレビジョン」「テレフォン」「テレパシー」などと同様で、「離れて」という意味があり、「work = 働く」と組み合わせることで「離れたところで働く」という意味になります。そもそもの始まりは1970年代。当時アメリカのロサンゼルスでは自動車による大気汚染が大きな問題となっており、車を使わずに自宅で仕事をするスタイルが導入されたのが始まりでした。

日本では1980年代のバブル期に、激しくなる一方の通勤ラッシュから社員を守るために、大手企業が東京の周辺都市に本社と同等の設備を持つサテライトオフィスを設立したのが始まりと言われています。

テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」の3つがあります。

●在宅勤務
自宅にあるインターネット環境からクラウドサービス等を利用して、オフィスで働く人や在宅勤務者同士でコミュニケーションを取りながら仕事をするスタイルです。

●モバイルワーク
顧客先に駐在して仕事をしたり、移動中にパソコンやスマートフォンを活用したりしてオフィス外で働くスタイルです。昨今はスマートデバイスの普及やネットワーク環境の整備が進み、どこにいても仕事ができる環境が整ってきました。カフェなどを利用したモバイルワークは、多くのフリーランサーの働くスタイルとなっています。

●サテライトオフィス
本来の職場以外のオフィススペースで、パソコンなどの機器を利用して仕事をするスタイルです。サテライトとは衛星のこと。都市企業では郊外や地方にサテライトオフィスを設置し、地方企業は都市部に設置するパターンが一般的です。

 

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出典:パーソル総合研究所 テレワークの実施状況と希望状況

日本のテレワーク実施者はまだ13.2%

とはいうものの、日本でテレワークを実践している人はまだまだ少数派です。パーソル総合研究所が今年の3月9日〜15日に全国2万人の正社員を対象に実施した最新調査によると、現状のテレワーク実施者は全体の13.2%に過ぎないことがわかりました。しかしながら、アメリカではすでに9割近い企業がテレワークを導入しており、日本でも今後はこの働き方が急速に普及していくことは確実です。事実、日本政府は「働き方改革」の柱の一つとしてテレワークの推進に積極的に取り組んでおり、今回の新型コロナウィルス対策をきっかけに、一層力を入れていくと見られています。もしまだ未体験の方は、少しでも早くテレワークに取り組んでおくべきでしょう。

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出典:国別テレワーク企業導入率(平成28年6月総務省「テレワーク推進に向けた政府の取組について」)

経験者が語るテレワークのメリット

それではここからは、実際にテレワークに取り組んできたエンジニアの声をご紹介していきます。全体感としてはテレワークに前向きな意見が多く見受けられました。

① 通勤時間が不要

睡眠を除いた1日の活動時間を16時間とすれば、往復2時間の通勤時間は実に1/8を締めることになります。また、通勤は思っている以上に体力を使うもの。その分のエネルギーを仕事や他の活動に使うことで、より充実したなライフスタイルの実現が可能になります。

② 人の目がないのでリラックスできる

人は他人と同じ空間を共有するだけで緊張感を抱くもの。テレワークは周囲に人がいないので、その分リラックスできます。他人の目線を気にすることなく、好きな時間に好きなことに取り組めることをメリットにあげた人も多数いました。

③ 作業に集中できる

「一人の方が作業に集中できる」という意見も多数ありました。テレワークなら開発業務に集中しているときに急に声を掛けられて打合せが始まるといったこともなく、自分のペースを保てるので仕事がはかどるという声が多数ありました。

④ 体調に応じて働ける

仕事を休むほどではないがどうも体の調子が良くない、そんなときもテレワークなら体調に合わせて休息をとりながら仕事ができます。疲れたら少し横になることもできれば、咳やくしゃみなどで周囲の目が気になることもありません。

⑤ 人間関係での悩みが軽減する

テレワークの場合、ある程度は人間関係に束縛されずに仕事ができます。もちろん、まったくコミュニケーションがない訳ではありませんが、苦手な人の顔を見る必要がないのでずっと気がラクだという正直な意見もありました。

このように、「テレワークが始まってよかった」という感想が多い一方で、「実はイタい目にあった」というマイナス面の意見も結構あります。

 

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テレワークで起こりがちなアクシデント

① 時間管理が難しい

テレワークで一番の問題は、時間管理です。リラックスできるというメリットは、ついダラけてしまうというデメリットと背中合わせ。時間をムダに使ってしまい、気がつけば納期が切迫してしまったなんてことも。反対に、仕事がはかどりすぎてオーバーワークになってしまう人もいるようです。

② 作業環境が悪くて身体に負担がかかる

例えば、ダイニングテーブルの上で長時間ノートパソコンを使うと、肩や腰を痛める原因になります。これは背骨が曲がった状態が長時間続くから。そもそも会社が業務に最適化した環境を用意してくれるオフィスとは違い、家やカフェでの仕事は想像以上に身体に負担をかけます。デスクやワークチェア、照明など、最適な作業環境を整える必要があります。

③ 孤独の時間が続いて気分転換ができない

仕事に行き詰まった時は、気分転換が必要です。誰かとのちょっとした会話から元気が出たり、ヒントが得られたりするものです。ところが孤独な時間が続くテレワークの場合、何気ない会話自体が難しく、気持ちのコントロールに悩んだり、実際に心を病んでしまうケースも見られるようです。

④ チャットで感情の行き違いが起こる

チャットツールは要件を端的に伝え合うコミュニケーションに優れたツールです。一方で、気持ちが伝わりにくいため、時に感情的なもつれの原因となることも。チャットツール上でのやり取りでイヤな思いをしたり、人間関係を悪くしたという経験を、多くの人が持っていました。

⑤ タイミングよく上司や先輩に相談できない

ちょっと相談したい時に、オフィスなら相手の姿が見えるので話しかけるタイミングが判断できますが、テレワークの場合は声が掛けづらく、ついつい自分一人で悩んで業務が行き詰ってしまうということがあるようです。

 

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テレワーク勤務があなたの「働く力の向上」を急加速する

それでは最後に、マネージャーやチームリーダーの人たちに「テレワークをうまく活用できている人たちの共通点」を聞いてみました。すると、「通常の仕事にも共通する極めて基本的な姿勢が大切」という回答が得られました。詳しく見ていきましょう。

① 日々の成果をきちんと積み重ねる

上司にとって一番の心配事は、プロジェクト全体の進行が遅れること。上司や周囲と約束した日々の成果物をしっかり残していくことでこそ、信頼が積み重なるものです。テレワークでは、仕事の成果にこそいつも以上に注意してください。

② 報連相は小まめに

上司はプロジェクトの進行状況を常に気にしていますので、メンバーからの報告がないと大きなストレスを感じます。テレワークでは報連相が普段以上に重要で、これがきっちりできる人にはどんどん信頼が高まります。また、悪い報告ほど早く相談してくれると助かるという意見もありました。

③ チームメンバーをサポート

自分の仕事は完璧にこなしながらも他のメンバーをサポートしてくれる人は、上司にとって本当に頼もしい存在。テレワークこそチームワークの意識が大切。チームを助けることができる人は当然周囲からの評価が高まります。

④ レスポンスを早く

「〇〇さんはレスが早い」という評判は、かなり周囲の評価を高めます。「いいね!」や絵文字だけでもいいので、即レスを心がけましょう。早いレスは周囲の不安を解消し、チームに安心感を与え、上司は決断を早めることができます。

⑤ チャレンジする姿勢を見せる

オフィス勤務なら、頑張っている先輩や同僚の姿を直接見ることで刺激を受けることができますが、テレワークの場合は周囲の視線が少ないため、「求められる成果さえ残せばOK」という考え方になりがちです。そんな中でも、自ら高みを目指してチャレンジする姿勢を見せる人は、周囲に刺激を与え、チームの空気を前向きに変えてくれる貴重な存在となります。

 

 

このように見てみると、テレワークには「責任感」「自己コントロール」「気遣い・気配り」「コミュニケーション力」といった高いレベルのヒューマンスキルが求められることがわかります。そもそも離れた場所にいる人たちが互いに連携しながら、一つのプロジェクトを進めていくテレワークという働き方は、実は通常業務とは比較にならないほどの難しさがあります。つまり、テレワークではビジネスパーソンとしての力量の差が顕著に現れるのです。

今回のできごとを契機にテレワークが一気に広がっていくことは間違いありません。ぜひこの機会を大きなチャンスと捉えて、前向きな姿勢でテレワークに取り組んでみてください。そして、テレワークはあなたの「働く力の向上」や「成長」を急加速する機会となって、たとえば将来のフリーランサーなどを含めたキャリアの選択肢が大きく広がることにつながっていくのです。


(E-30!!!編集部)

 

 

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