コロナウィルスの流行を受けて、テレワークをさらに押し進める企業が増えていると言う。JT(日本たばこ産業株式会社)でも原則週2回を上限としていた在宅勤務の制限を撤廃する。これによって全く会社に出勤しない社員が生まれるそうだ。
私のように昭和を知る人間としては、随分と関係性が希薄な職場のような印象を受けてしまうのだが、これこそが現代の働き方ともいえる。私が新入社員であった90年代は、バブル崩壊といわれながらも、12月は毎日のように会社や取引先との「忘年会」に出かけていた記憶がある。新橋駅のタクシー乗場では深夜3時頃にならないと、空車が見つからず、会社近くのビジネスホテルに泊まりこむなんてこともざらだった。
こうして働き方改革の浸透と共に、会社と個人の関係性を見直す企業は益々増えていくのだろう。
「私、忘年会スルーします」。
ホットペッパー総研によると、2019年12月の忘年会、2020年1月の新年会の参加予定回数は昨対並み~微減であるにも関わらず、なんと「会社・仕事関係」での忘新年会実施率は45.1%で過去最高の予測であった。
一方で、「忘年会スルー」と言う言葉が年末に流行した。
会社・仕事関係での忘年会実施率が過去最高なのに対して、実際に忘年会に参加したいか否かと言う参加意向に関しては、約7割の方々が参加したくないと言う、なんとも寂しい結果が発表されていた。
若者の方が高い参加率ってホント?
こうした会社と個人の関係性の変化において、印象的なエピソードを年末のニュース番組が紹介していた。とあるIT企業の若手在宅勤務者がテレビ会議システムを活用して、会社の忘年会に自宅から参加するという。パソコン画面をのぞき込みながら、缶チューハイを飲んでいる若者の姿はなんだか滑稽に見えたが、社員間で情報交換をしながら歓談するとても貴重な時間だということだった。
私のイメージからすると、忘年会を嫌がっているのは若者だと思っていた。しかし、実際は年齢が高くなるほど参加したくない意向が多くなるという調査もあり、一概に世代特性でくくることはできそうもない。
むしろ、テレワークとかに積極的に取り組む若い職場の方が、コミュニケーション不足を補う上で、忘年会は必要なイベントと捉えられているのではないだろうか?
で、わが社の忘年会ってどうなのさ。
「我々の忘年会は、仲間と一緒においしい食事を食べながら、仕事のことや趣味のこと、ゆっくりと話せる大切な時間だと思います。初めて会う社員と情報交換したり、自分の知らない業務を知ることができて、とてもおもしろい交流の場となっています。」と牛久さん(30歳)はいいます。
忘年会の序盤で組み込まれている表彰式も、彼らにとってもうひとつの大切なプログラムだという。鈴木さん(29歳)はみんなの前で表彰されるのはもちろん嬉しいし、「知っている仲間が表彰されることは、もっと嬉しいと感じます」と語る。
しかし、自分も負けてはいられないと、刺激を受ける貴重な時間なのだそうだ。
そりゃ、改善したい点はありますよ!
その一方で、運営側には少し耳の痛い意見や感想も存在するらしい。当日に表彰されることを知ることが多く、その成果を言葉にするだけの時間が無いため、ただただ感謝の弁に終わってしまうのが、ちょっともったいない。スピーチ内容を考えたいので、もう少し早めに教えてもらいたいという。
まず、会社がその年のテーマを明らかにし、それに照らし合わせて表彰者を選考し、表彰者からは業務のプロセスも含めて、自分の言葉で語ってもらう。そうした場となれば更に盛り上がることは間違いないと彼らはいう。
それは、とてもリーダーらしい俯瞰(ふかん)した観点だと私は感じた。
当事者意識が楽しさを倍増させるから。
また、彼らは自らリーダー的な役割を認識し、当日はホスト的な役割まで自主的にこなしている。見知らぬ人が集まるテーブルであれば、会話の糸口を作ったり、隣り合うテーブルとテーブルのメンバー間を取り持ったりもする。鈴木さんは「みんなに思い切り楽しんでもらい、喜んで帰ってもらえることが、とても嬉しいし、やりがいを感じたりもする」という。
主体的にかかわることで、より忘年会が楽しくなるし、自主運営の会であるからこそ、参加意識が高まり一体感がでてくると感じているようだ。
“望年会”に込めた意味とは
インターネットの普及や会社と個人の関係性が変化し、多様な働き方が生まれる中で、社員間のコミュニケーションを保つ方法も形を変えていく。昔ながらの忘年会もその一つであろう。関谷さん(32歳)ははっきりとこう言いました。
「師走の会社帰りに行われるただの飲み会はいらないけど、年に一度、我々が仲間であることを確認でき、職場では少し希薄な先輩後輩の関係性を実感できる忘年会は、私にとってとても必要な時間だと思います。」
一年間頑張った人も、物足りなかった人も、表彰された人も、惜しかった人も、こうして同じ時間を共にして、来年に向けた抱負を語り合う。
そんな“望年会”ならアリなのではないでしょうか?
(E-30!!!編集部 上村)