機電学生の皆さん、その学びは輝かしい未来への「プラチナチケット」だ!

コロナ禍が企業のデジタルトランスフォーメーションに拍車をかけ、あらゆる業種でITスキルを持つ人材へのニーズが高まっています。2030年までで最大79万人のITエンジニアが足りなくなるとの試算もある中、増えているのが機電系学生のITへの進路変更です。当メディアを運用する(株)エスユーエスへも、機械や電気を学んだ学生がITエンジニアを目指して入社してきます。「時代はIT!」「モノづくりよりも情報通信」「将来性を考えるならハードよりもソフト!」。思わず納得しそうになりますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 
 

そもそも理工系人材は希少価値が高く、企業も必要としている!

まずは、皆さんと同じように理工系学科で学ぶ学生は、今どのくらいいるのでしょうか。実は、大学進学者数は年々増加傾向にあり、2020年度に大学の学部学生数は262.4万人と過去最多の人数を記録しました。ところが、逆に「理学」「工学」の入学者数は2000年をピークに減少しており、2020年の大学入学者全体から見た割合はたったの17%(赤枠)。

出典:第3回 教育未来創造会議 配布資料|内閣官房※囲み枠はエスユーエスにて追加作成

これは、欧州諸国、米国、日本などを含む先進38カ国で構成するOECD諸国の中ではノルウェーと並んで最下位。第四次産業革命が世界的に広がるきっかけとなった『Industrie 4.0』を国家戦略として打ち出したドイツと比較するとなんと半分以下になっています。

出典:第3回 教育未来創造会議 配布資料|内閣官房

この状況を変えていこうと、文科省によるSTEAM(Science、Technology、Engineering、Arts、Mathematics)教育の推進、大学と企業との連携による実践的なモノづくり教育など、産官学連携でさまざまな取り組みが、今まさに行われているところ。つまり、皆さんのように理工系、その中でも機械や電機系で学んだ人材は、特に日本国内においてはそもそも極めて「希少価値」の高い存在、「プラチナチケット」を持つ存在だと言えるのです。

では、実際のところ企業側からの人材需要はどうなっているのでしょうか? 2018年の段階で1300社超の企業が「5年後技術者が不足すると予想される分野」として挙がっているのが以下の分野です。

出典:理工系人材需給状況に関する 調査結果概要 5年後技術者が不足すると予想される分野参照※エスユーエスにて90分野より上位10分野を抜き出し作成|経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進室

実は、理工系のなかでも圧倒的に不足されると予測されているのが「機械工学」(12.4%)。次いで、「電力、アナログ・デジタル回路」(7.5%)であり、IT分野の「通信、ネットワーク、セキュリティ系」(5.8%)、「ハード・ソフト(OS・アプリ)、プログラム系」(5.7%)以上に機電分野の不足感がかなり上回っていたのです。

 

 

ソフトを現実世界で活用するには、ハードの進化が欠かせない!

なぜ、企業は機電分野のエンジニアが圧倒的に不足すると考えているのでしょうか。逆説的ですが、それは、IT分野での急激な技術革新が進んだからこそです。

たとえばロボットハンドの活用が進む産業分野では、AIのディープラーニングや画像認識技術の進化により、カタチや大きさ、柔らかさの違うモノをどのような力加減で掴めばよいかの緻密な計算が瞬時にできるようになりました。しかし、それを現実の世界で実際に動かし、活用するためにはそれに見合った繊細な動きができるハード(機械)が必要になります。さらに、その機械を正確にコントロールする電子回路やセンサも必要になります。これは、どの分野であっても同じこと。いくらソフト技術が進み現実と見紛うようなVR空間が生まれたとしても、VRゴーグルやグローブ、さらにはジャケットなどのさらなる軽量化や低価格化が実現できなければ、誰もが日常的にVR空間を使用するまでに普及するのは難しいでしょう。ハードの技術進化なくして、あのメタバースを描いた映画「レディ・プレイヤー1」の世界は実現できないのです。

たしかに、このコロナ禍で機電エンジニア向けの求人は減少しました。しかし、2019年までは全体として増加してきていたことは事実。さらに現在はすでに回復傾向にあります。長期的な目線で見れば機電系の需要は必ず右肩上がりに伸びていきます。それは、ここまで見てきたデータからも明らかです。

出典:市場動向レポート【2022年3月】機電系エンジニアの市場動向|パーソルテクノロジースタッフ

 

 

フリーランスや起業はITエンジニアの特権ではない!

その一方で、ぜひ注目して欲しいのは、フリーランスや起業といった選択肢です。

そもそも理工系学部を選んだ理由として、その根底に「自分の好きなモノづくりがしたい」という想いがあったはずです。大学を卒業した時点では、自分の技術が社会で通用するかどうかも分からず、なかなか「独立」を思い描くことは難しいかもしれません。しかし、社会で経験を積み、エンジニアとしての自信が高まってきたとしたらどうでしょうか。

以下は、エンジニア人財サービスを提供するVSNが2020年に実施した「会社選びやキャリアの志向に関する意識調査」のデータです。「エンジニアとしてのキャリアプラン」の回答から、フリーランス・起業を志向する割合のグラフを抜き出しています。

出典:VSN世代別エンジニアの意識調査を実施、令和新卒エンジニア、「企業文化や雰囲気」、「成長環境」を他世代よりも重視※エスユーエスにてグラフ作成|株式会社VSN

実際に、新卒ではほとんどない「フリーランス・起業志向」のエンジニアは年代が上がるつれ増えていき、「ゆとり世代」である30代では2割近く、「氷河期世代」に当たる40代では、4人に一人近くは「フリーランス・起業」を視野に入れるようになっているのです。

ちなみに、フリーランスや起業というと「圧倒的にIT分野に多い」と思われるかもしれませんが、そんなこともありません。以下は、近年急増している大学発ベンチャー企業の主要製品・サービス分野です。

出典:令和2年度産業技術調査事業 「研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速 及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査」 大学発ベンチャー調査 調査報告書|野村総合研究所

純粋なIT分野である「ソフトウェア・アプリ」はたった10%にとどまるのに対し、「医療機器」「AI・IoT」「エレクトロニクス」「ロボティクス」「航空宇宙」分野のトータルは30%。機電の技術が必要とされる分野が3倍になっています。

 

 

機電系の起業を後押しする時代が来ている!

「21世紀の製造業は、アイデアとラップトップさえあれば誰もが自宅で始められる」「ウェブの世界で起こったツールの民主化が、もの作りの世界でも始まった」。

今から10年前の2012年にはすでに、米の最先端テックカルチャー誌『WIRED(ワイアード)』の元編集長クリス・アンダーソンが後に世界的ベストセラーとなる著書『MAKERS(メイカーズ)』の中でそう宣言しています。本書の発売の翌年2013年には日本でも3Dプリンタがちょっとしたブームとなったことを覚えている方もいるかもしれません。

『MAKERS 出典:21世紀の産業革命が始まる』NHK出版|クリス・アンダーソン 著 関美和 翻訳

ご存知の通り、今やRaspberry PiやArduinoなどといったオープンソースのハードウェア(マイコンボード)は安価な値段で手に入ります。3Dプリンタの価格はさらに下がって、レーザー加工機などの各種工作機械を備えたメーカーズラボもあちこちにオープンし、試作品を作るのも難しいことではなくなりました。クラウドファンディングの広がりで資金調達もしやすくなり、増加するファブレスメーカーに対応するように小ロットからの生産を引き受ける工場も出てきました。

また、企業も「一人製造業」をバックアップ。大規模な電子工作系の展示会やスタートアップのためのピッチコンテスト、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家とのマッチング商談会なども盛んにおこなわれるようになってきています。

コロナ禍での一時的な停滞はあるものの、この10年で「自分の好きなモノづくり」から「起業」までの距離はずいぶんと縮まってきているのです。

 

 

「好きなモノづくりで生きていく」ために学び、世界を広げよう。

ただし、機械や電気の専門知識だけを追い求める「専門バカ」では、今の時代は「自分の好きなモノづくり」はできません。実際、「fabcross forエンジニア」が実施した「専門分野以外の知識、技術習得」に関するアンケートでは、エンジニア約8割が「業務上で自分の専門以外の分野の知識・経験が必要になったことがある」と回答しています。

分野別でみても、現在のモノづくり現場では、かなり幅広い知識を求められている様子が分かります。

出典:【専門分野以外の知識、技術習得に関するエンジニア800人意識調査】|fabcross for エンジニア powered by MEITEC

また、フリーランスや起業まで意識するとすれば当然ですが、たとえ企業勤めであってもポジションが上がれば上がるほど、技術に加えて提案力や交渉力などのコミュニケーション力に代表されるヒューマンスキルが必ず必要となってきます。大切なのは、今持っている機電の専門技術に磨きを掛けながら、“視野を広げて学び続けること”。実は、多忙な社会人にとってはそれが一番難しいことかもしれません。

だからこそ、それができる環境選びがとても重要になってきます。

たとえば、当メディアの運営会社である(株)エスユーエスも様々な形で機電系エンジニアの成長を応援している会社のひとつ。機械・電気・IT・化学・バイオと幅広い分野のエンジニアが集い、所属エリアごとに技術力を高められる数多くの勉強会が開催されています。さらに、ITエンジニアが電気勉強会へ、電気エンジニアが機械勉強会へと、分野を超えた学びや有志のプロジェクトも始まっています。他にも、毎年アップデートを重ねたヒューマンスキル研修やエンジニア交流会などがあり、技術力だけではなく社会人基礎力や人脈も広げていける環境です。せっかく手に入れようとしている「プラチナチケット」に自信を持って、会社の10年後のビジョンとして「エンジニア発新規事業」も掲げるエスユーエスを、あなたの進路の選択肢のひとつに加えていただければと思っています!


(E-30!!!編集部)

 

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