高校生のなりたい職業1位は「エンジニア・プログラマー」――このような調査結果を、学研教育総合研究所が昨年12月24日に発表しました。性別・学年別では、男子全学年と、1年生女子の部門で1位を獲得したのです。
学研教育総合研究所は、文部科学省が進める教育のデジタル化施策「GIGAスクール構想」や新学習指導要領による「情報Ⅰ」の新設などが影響と分析。実際すでに2020年から小学校、2021年から中学校、2022年から高校でプログラミング教育が始まっており、学生たちにとって身近なものになったことが大きいと考えられます。
また、新卒向け就職メディア「キャリタス就活 」を運営するディスコが、2023年3月卒業予定の大学4年生(理系は大学院修士課程2年生含む)を対象に実施した「4月1日時点での就職活動に関する調査」によると、内定保持者を含め就職活動を継続している学生(全体の82.1%)のうち、現段階で志望している業界で最も多かったのは「情報処理・ ソフトウエア」で17.5%、次いで「情報・インターネットサービス」が15.9%と、IT系業界が上位を占めました。
今回はITエンジニアを目指す方が増えていることに注目し、大まかに業態分類されるSIer、SES、技術派遣それぞれの働き方について解説していきます。
SIerで働くとは?
SIerとはSystem Integrator(システムインテグレーター)を略した言葉で、システム開発や運用などの一連の業務をクライアントから請け負う企業のことを指します。
まずSIerの企業は大きく分けて、メーカー系、ユーザー系、独立系、外資系の4つに分類することができると言われています。
メーカー系とは、大手コンピューターメーカー(PCやネットワークなどIT関連の機器を販売しているメーカー)の系列企業のことを指します。システム開発部門が分立してできた子会社を示すこともあります。基本的には親会社やグループ会社に常駐して働きます。親会社が大企業ということもあって企業体制がしっかりしている、親会社からの受注がメインで大規模プロジェクトに携われるメリットはありますが、要件定義などの上流工程は親会社が主体となるため下請け業務が多いといったデメリットもあります。
ユーザー系とは、コンピューターメーカー以外の大手企業の情報システム部門を分立させて設立した企業のことを指します。銀行系、通信系、商社系など、ユーザー系のSIerにはさまざまな系統があります。案件の受注は、親会社から受ける「内販」と、それ以外の企業から受ける「外販」の2タイプあります。内販・外販であっても上流工程から携わることもできるといったメリットがありますが、システム開発などのプログラミング実務は外注することが多くなり、ITスキルを磨く機会が少ないというデメリットもあります。
独立系とはメーカー系、ユーザー系のどちらにも属さず、システム開発を専門に扱う企業を指し、SIerの中の9割以上がここに分類されます。親会社を持たないため、分野も問わず、しがらみも少なく顧客の要望に合わせて開発をおこなえたり、自社パッケージ開発などがおこなえるという自由度の高さがメリットです。下請けや孫請けで開発を多くこなすため、プログラミングスキルを磨くことができますが、設計・要件定義などの上流工程に関わる機会は少ないというデメリットもあります。
外資系とはグローバル市場で活躍する海外の企業で、主に日本法人が存在するような大手企業を指します。外資系ならではの「成果主義」のため競争が激しいですが、そのぶん実力のある人は「高収入」を得るチャンスがあることや一緒に働くメンバーのレベルが高いこともメリットでしょう。仕事上で使用する言語が日本語ではない企業も多いため、開発スキルだけではなく、語学力なども求められる場合もあるかもしれません。
このように系統によっても多少違いますが、SIerでは基本的に請け負った案件は自社内でチームを組んで進めていくことが多いため、指揮命令権も雇用主(SIer)となる場合が多く、クライアントと関わる機会があまりないということがあります。いろいろな人と関わりたい、仕事の仕方やスキルを学びたいという方には少し物足りないかもしれません。またSIerでは、報酬の対象はSESや技術派遣と違い、働いた時間ではなく成果物に対してなので、自分で仕事をコントロールしながら進めることは大きな魅力かもしれません。
このようにSIerにはさまざまな系統があり、働き方も大きく変わるため、SIerであればすべて同じというわけではなく、自分の目指すキャリアに沿って企業を選択することが大切です。メリット・デメリットをそれぞれまとめると以下のようになります。
●プロジェクトが始まると自社内で作業を進めていくため、連携して働きやすい
●成果物に対して報酬が発生するため、自分で時間などをコントロールしやすい
●親会社が大企業である場合は、大規模プロジェクトに携われる機会も多い
●会社として幅広い分野・事業に携わっている
●メーカー、ユーザー、独立、外資系の選択によって働き方が大きく変わる
●指揮命令権が雇用主(自社の上司)となるため、クランアントと関わる機会がないことも多い
●PLやPMなど管理系の仕事が主になり、現場で最新技術を扱うことが少なくなるSIerもある
●下請けが多い場合、上流工程の業務携わる機会がないSIerもある
●分野や事業によって必要な知識やスキルが変わるため、エンジニア個人は一度配属され部門から異動することはあまりなく、幅広い事業に関われるわけではない
SESで働くとは?
一方、SESとはSystem Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)を略した言葉で、クライアントに対してシステムの開発・保守・運用に関する委託契約の一形態であり、受託を受けた業務に対してITエンジニアの労働を提供する契約のことです。
基本的にSESは働いた時間に応じて給与が支払われ、システムの品質や納品できたかについては責任を負いません。事前に労働時間について定めた雇用契約を結んでいるため、残業も少ないことが多いという魅力もあります。
派遣と間違えられやすい働き方ですが、大きな違いは指揮命令権の違いにあります。SESの場合、クライアント先に常駐して仕事を行いますが、指揮命令権は雇用主(自社の上司)にあるため、クライアントは残業や細かい作業の指示を行ったりすることはできません。クライアントが業務の指示を出してしまうことは違反行為となってしまうのですが、指揮命令がどこからなのか証拠として残しづらいなど法律的にグレーなところがあるのも事実としてあるようです。メリット・デメリットをそれぞれまとめると以下のようになります。
●システム要員をSESでまかなう企業が増えているため、案件が豊富にある
●客先常駐で働くため社外の人とのやり取りが増え、繋がりができる
●さまざまな企業やプロジェクトの案件に関われる
●客先常駐なものの指揮命令は雇用主(自社の上司)になるため、クライアントと関わる機会があまりないことも多い
●指揮命令が曖昧になるなどトラブルになりやすい
●2次請け3次請けが多く、上流工程の案件に携われる機会が少ない
技術派遣で働くとは?
次に、当メディアの運営会社エスユーエスが行っている事業「技術派遣」の働き方を説明していきます。そもそも派遣には、「登録型」と「常用型」の2種類あるのをご存じでしょうか?
恐らく「派遣」と聞いて多くの方がイメージされるのは「登録型」の形態かと思われます。登録型派遣では、働こうとする方が派遣会社に登録をするところから始まります。派遣会社からお仕事を紹介され就業を開始、派遣先企業で就業している期間のみ派遣会社と雇用契約を締結する仕組みのことで、期間終了したら雇用契約も終了となる派遣のことです。
もうひとつの形態として「常用型」があり、エスユーエスもこの「常用型」技術派遣の形態になります。
常用型派遣とは、派遣会社で常時雇用している正社員を、クライアントに派遣する仕組みです。派遣と呼んでいるため誤解されがちですが、雇用形態は正社員となります。
登録型派遣と違い、派遣先企業での就業期間が終了しても、派遣会社の正社員のため雇用関係は継続しており、次の新たなクライアントに派遣されるため、一ヶ所で落ち着けて働きたいという人にはあまり向かないかもしれません。一方でもし新たな派遣先がすぐに決まらない場合でも次のクライアントで就業するまで給与が支払われるのが特徴です。
常用型派遣ではクライアント先に常駐し、クライアントの社員と一緒に仕事を進めていきます。また、指揮命令権がクライアントにあるため、配属されたいろいろな方の指導や指示を直接仰ぐことができるのがSIerやSESとの大きな違いかもしれません。
常用型派遣は、専門性を持っている人材を必要なときに柔軟に活用したいというさまざまな企業のニーズにマッチするべく、比較的長期のプロジェクトを抱える研究機関や、情報技術、メーカーの開発部門、設備の工事管理、生産管理など技術系を中心に広く利用されています。メリット・デメリットをそれぞれまとめると以下のようになります。
●業界問わずいろいろな会社で働くため、幅広いスキルを身につけられる
●客先常駐で働くため社外の人とのやり取りが増え、繋がりができる。また、指揮命令がクライアントになるため、いろいろな人の指導を受けることができる
●上流、下流工程とそれぞれにプロジェクトがあり、スキルに応じて就業できる
●社会やクライアントのニーズに合った新しい技術領域に携わりやすい
●プロジェクトの契約期間があるため、ずっと同じ企業で同じ人たちと同じ仕事を希望している方には向かない
●学習意欲や向上心がないと、上流工程のプロジェクトに就きにくい
●指揮命令権がクライアントにあるため、残業など労働環境は配属先に影響される
※エスユーエスは優良派遣事業者認定を取得しているため、労働環境は管理されています
エスユーエスが「常用型」技術派遣を選んだ理由
新卒入社のうち、3人に1人は3年未満で退社すると言われています。さらに、日本では昔から「石の上にも3年」と言われ、こうした早期退職者は転職がしづらいというところありました。しかし「学校を卒業して働いたこともないのに、初めて就いた会社が自分に合っているとは限らないのではないだろうか?」という疑問がエスユーエスには創業当時からありました。当社が「常用型」技術派遣を選んだ理由はここにあります. 技術派遣であれば、「あらゆる業種や工程を実際に経験でき、自分に合ったキャリアを見つけてもらえるのではないだろうか」と思ったのです。実際今では、組込やネットワーク系、金融などをはじめとした幅広いプロジェクトで経験を積んでもらえるようになりました。この想いは現在、「社会人学校」というコンセプトとなり、当社独自のビジネスモデルとなっています。
そして、さらにキャリアの選択肢を広げてもらうため、AIやAR/VRといった最先端分野での事業創出も積極的に展開しています。国際的なAR、VRのエキスパートによる教育プログラムの実施、地元企業や起業家にソリューションを実装するためのアクセス環境の提供などを行うVRイノベーションアカデミー(VRIA)を設立しました。AI分野では、国内屈指のAIデータサイエンティストである研究者を所長に迎え、VR×AIの研究、自社製品やサービスの開発を行う研究所SUSLabを設置しました。
また当社では、フリーランスエンジニア専用の求人案件検索エンジン『フリーランススタート』を運営する株式会社Brocanteが実施した「ITフリーランス人材及びITフリーランスエージェントの市場調査 2021年版」によると、フリーランスITエンジニア数は2020年に急増、今後も増加傾向で2022年には約27万以上に拡大すると予想されていることに注目し、技術派遣によって得られた知識や技術を活かして、独立・起業を目指す方を応援する「フリーランスバリュー制度」を誕生させました。
この制度は、当社の正社員エンジニアとして一定の固定報酬や福利厚生などの処遇を維持したまま、個人事業主のように自ら挙げた業績に連動した報酬を得ることができるというものです。「いきなり独立・起業は正直怖い」「独立・起業するための準備をしたい」という方にはぴったりの制度ではないでしょうか。また、副業についても許可制ではなく「届出制」とし、報告をするだけで自由に副業ができるようにするなど、より自分らしい働き方ができるアシスト体制を整えています。
エスユーエスでは今後も「常用型」技術派遣でさまざまな業種や工程を経験してもらい、AI、AR/VRなどの最先端分野、自社開発、コンサルティング、フリーランスなどの独立といったあらゆるキャリアのチャンスを提供していきます。
20代のITエンジニアが考えるべきキャリアとは
ITエンジニアといっても、SIer、SES、技術派遣とあらゆる働き方があることが分かっていただけたでしょうか?ただ、それぞれのメリットやデメリットは理解できたけど、まだどうしていいのか分からないという方もいるでしょう。
そんな方には少し視点を変えて、「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」という本で注目された、「100年以上生きる時代をどう過ごしていきたいか?」と考えてみるのもいいかもしれません。
この本の著者であり、日本政府の人生100年時代構想会議メンバーに唯一の外国人として招聘されたリンダ・グラットンは本書の中で、特にこれからさまざまな経験を積む20代には、「自分にとって何が重要か?」「これからどう生きていきたいのか?」などを探求し続けるためにも、一ヶ所に腰を落ち着けることなく、身軽に探検と旅を続け、幅広い進路を検討する「エクスプローラ」という生き方を推奨しています。20代は何に対しても「経験」をすべき時期で、それらの経験を通して自らの選択肢を増やし、「自分らしさ」を発揮できる場所はどこなのかを見つけ出していくべきと述べられています。するとキャリアのみならず人生のパートナーやライフスタイルに至るまで、自分のいいと思ったところを検討し導き出すことができるのだそうです。
コロナ禍によるリモートワーク拡大や副業解禁に伴う働き方の多様化などで、自分のキャリアを見つめ直したことが、フリーランスのITエンジニアが急増した理由として考えられていますが、やはり自分の好きな場所で好きなように働くフリーランスは多くの人が憧れる働き方ではないでしょうか。将来、スタートアップしたり、フリーランスとして働きたいと思ったとき、もっとも重要になるのは多くの豊富なスキルと人との繋がりです。その面では、あらゆる業界や企業であらゆる人と働ける技術者派遣の働き方は理想的と言えなくもありません。
とはいえ、どの働き方にもメリット・デメリットがあり、一概にどれがいいとは言えません。これからの時代、自分がどのように成長していきたいのか、どんなエンジニアになりたいのかを改めて考え、自分に合った働き方を選択していただけると嬉しいです。
(E-30!!!編集部)