ますます注目を集める「フリーランス」。 これからのITエンジニアの生存戦略について。

エンジニアとして、20代後半~30代前半になると多くの人が考えるのが「フリーランス」という選択肢。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、一般的に「収入が安定しない」というイメージのある働き方に不安を感じ、一歩を踏み出せない人も多いはず。日々刻々と状況が変わる中、これからエンジニアとしてのキャリアはどのように築いていくべきでしょうか。

 

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フリーランスの4人に1人は、コロナ禍でも収入UP

テレワークや時短勤務など、「働く場所や時間帯を柔軟に決められる」ことが定着してきた現在。そのようなことから、フレキシブルな働き方を重視する方が増加しています。

 

パーソルテクノロジースタッフの調査によると、エンジニアの方は実際にテレワークを経験してみたことで、コロナ禍の前に比べて「仕事をする場所を自分自身で選択できる」「働く時間や時間帯を柔軟に決められる」などを重視する傾向が強まったようです。ワークスタイルについて大きな裁量権を得ながら、生産性高く働きたいという考えを持つ方が増えています。

 

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(【調査】エンジニアの1/4はフリーランス希望、「はたらく価値観」は柔軟志向へ/パーソルテクノロジースタッフ)

このようなワークスタイルとして代表されるのが「フリーランス」。同調査によると、フリーランスとしての働き方を希望するエンジニアはおよそ4人に1人、さらにはフリーランスとして働く可能性が増えたという方は9.1%という結果が報告されています。やはり先の調査結果と同様に、ワークスタイルを重視してフリーランスを視野に入れた方が増えていることがわかります。一方で、「収入の不安定さ」を考え飛び込めない…という心境の方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、イントループの「新型コロナウィルスのフリーランスへの影響」の調査報告によると、この状況下で収入が減った人が多い一方で、現在の収入の状況が増えたと回答したフリーランスは25%、つまり、4人に1人は収入が増えているといった結果が発表されています。そして収入増の人の50%弱がソフトウェア・通信業で仕事をしていて、その要因は、「スキルの幅を広げられるような経験を積んでいた」との回答が最も多く、次いで「専門性を高めるために勉強していた」が多く、取り組む案件やキャリア形成を考えて行動に移していたことがわかります。フリーランスに限らず、こういった意識や動きが、今後のキャリア戦略のヒントとなりそうです。

 

フリーランスか転職か…どっちがいいの?

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(【調査】エンジニアの1/4はフリーランス希望、「はたらく価値観」は柔軟志向へ/パーソルテクノロジースタッフ)

フリーランスへの志向が高まる一方で、約15%は「正社員としてはたらく可能性が増えた」とも回答しています。新型コロナ感染拡大による経済状況から、収入や雇用に対して不安を感じ、正社員としての安定感を求めているエンジニアも増えているのです。しかし、このコロナ禍において大手企業のボーナス削減や調整解雇などのニュースが相次ぎ、「企業=生涯安定」という図式は必ずしも成り立つとはいえない状況下にあるのは周知の事実。それでは近年の採用の動向は一体どのような状況なのでしょうか。

 

新型コロナ感染拡大により、一時はリーマンショック時を上回る求職難になると言われていました。しかし、「2021年転職市場の展望(リクルートキャリア)」のレポートによると、2020年6月時点で採用活動を再開した企業が約8割との調査報告もあり、コロナ禍でも戦略的人材採用は続いています。

 

同レポートによると、IT・通信業界の今後の展望は、『引き続き、DX関連、通信では5G関連、テレワーク・オンラインサービス増加に伴うインフラ系のエンジニア需要が高い。(中略)リモート環境になったことで、PMに求められる能力も少しずつ変化が出るかもしれない。一部の企業では「オンラインでもしっかりとコミュニケーションを取り、進捗管理ができる」ことを重視している。』と記載されています。コロナ禍によって、企業が求めるスキルが変わってきているようです。

 

一方で求職者側の動きとしては、『この状況だからこそ丁寧に比較した上で転職先を決めたいという意向も引き続き高く、応募社数が増加傾向にある。(中略)企業側の動きに連動し、2021年に向けてさらに複数の企業を経験している求職者が一定求められていくだろう。それに伴い、求職者側も今後、より社歴に関係なく選択肢は広がっていくと考えられる。背景にはDXを推進していく中で1業種に留まらない知識が求められたり、大手企業とベンチャー企業の知見を両方持っていることで双方を橋渡しするポジションを求められたりするためだ。複数の企業でしっかりと経験を積んでいる方にとってはチャンスと言える。』とあります。

 

今後もこの動向は続くことが見込まれており、幅広い知識や経験がより優位になっていくでしょう。

 

枠にとらわれない、新しい働き方が続々と。

では、フリーランスや個人事業主の市場はどのようなものでしょうか。

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まず社会全体の動きとして2020年6月に政府は「フリーランスとして働く人を保護するため、労働者災害補償保険(労災保険)のさらなる活用を図る」方針を発表しました。さらに12月にはフリーランスを保護するための独占禁止法の改正も発表。このように、近年フリーランスや個人事業主が安心して働ける環境の整備が急速に進んでいるのです。

 

また、経済状況の変化により各企業もそれぞれの施策を打ち出しています。そのうち、今注目されているのが「副業」です。実際、「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020)/マイナビ」の調査によると、現在副業を認めている企業は全体で49.6%、将来的に認める・拡充する予定の企業は計57.0%となっているとの報告がありました。今後はより「副業」「パラレルワーク」といった価値観がさらに浸透していくことでしょう。例えば、ヤフーが副業人材を100名募集したことは大きな話題となり、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。これはオンライン上で仕事を行うギグパートナーを、業務委託として契約する施策です。ギグパートナーで採用された人は10歳から80歳まで多種多様な人材が集まり、各領域で力を発揮しているとのこと。

 

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(「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」/マイナビ)

 

 

その他にも、ライオンが新規事業の立ち上げに伴い、他の企業で勤めている人を対象に公募を行ったり、NTTドコモが新規事業や期間が定められたプロジェクトにおいて専門性の高いフリーランスを活用するなど、外部人材を積極的に活用する動きが広がっています。また当「E-30!!!」を運営するエスユーエスでも、コロナ以前から取り組んでいた新制度「FV(フリーランスバリュー)制度」が本格スタートしました。正社員として雇用されながら、フリーランスのようにのびのびと自由度高く働けるプロジェクトです。

 

これらの事例のように、企業側も「育成を前提とした長く勤める人材の採用」といったこれまでの視点から、「スキルが高い人材を適材適所で活用する」といった視点が広がり、それに伴い柔軟な雇用方法を活用する企業が増加しているのです。

 

コロナ禍の先にある、ITエンジニアのキャリア戦略

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オンライン化が進んだことで、どこでも仕事ができる時代。会社に出社し、顔を合わせて働き、時には雑談をする…といった、時間や空間を共有することも少なくなりました。今後もオンライン化の波はより強まる一方で、従業員の会社に対する帰属意識は薄れていき、コミュニティとしての機能が弱まっていくことが予想されます。そのため、企業は目標達成が明確な「複数のプロジェクトが集まった組織」としての側面が強くなっていくことでしょう。

 

また、それにより仕事の進め方が「プロジェクト単位」になるといった変化も予想できます。すると、遂行する内容によって期間やメンバーも変わり、自分が担当する領域もさまざまになるため、より柔軟に対応する力が求められるでしょう。例えば、初めて一緒にプロジェクトを行うメンバーとの意思疎通や連携といった『コミュニケーション能力』、日々変わる環境だからこそ常にアンテナを張り巡らせて自身の知識を蓄えていく『学び続ける力』、同じ領域だけに限らず新しいことにもどんどんチャレンジしていく『推進力』など、これらすべての複合的な力、つまりは『対応力』が必要になっていくのではないでしょうか。

 

この力を鍛えるためには、一つの職場に限らずさまざまな職場やカルチャーを経験していく必要があります。さまざまな職場であらゆる人と触れ合い、また会社ごとの文化や価値観の違いなど、自分自身でまずは経験すること。それがこの変化の激しい時代において必要とされる人材となるために、大事なことではないでしょうか。今一度、自分の目指すステージや活躍の場を見つめ直し、チャレンジしていって欲しいと思います。

 

(E-30!!!編集部)

 

 

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